すべてを捨て去って空港から逃げる男はどこへ行ったのか。監視カメラの映像にはっきりと写る身元が確かな男はそれ以降、姿をあらわしていない――。

■空港で失踪した「世界ー有名な行方不明の観光客」

 2014年7月、ドイツ人の若者、ラーズ・ミッタンク(当時28歳)は友人らとブルガリアで休暇を過ごしていた。

 ドイツのサッカーチーム、ヴェルダー・ブレーメンのサポーターであったミッタンクは、滞在先のホテルの近くのマクドナルドで、バイエルン・ミュンヘンのサポーターのグループと出くわして口論になり、酔っていたこともありケンカにまで発展してしまった。

 友人たちが止めに入ったが、頭部を殴られたミッタンクはかなりダメージを受けており、病院に連れていかれると鼓膜が破れていることが判明した。

 医師は抗生物質などの薬を処方し、数日は飛行機に乗らないように忠告した。飛行機移動での気圧の変動が破れた鼓膜に悪影響を及ぼすリスクがあったのだ。しかし帰国の予定は明日であった。

 友人たちは滞在を伸ばして一緒にいると言ってくれたが、ミッタンクは友人たちに予定通り先に帰国してほしいと説得して帰らせたのだった。

 ヴァルナ空港近くの安いホテルに宿を移したミッタンクは、そこにいる間に母親に不気味な電話をかけている。

 ミッタンクは母親にクレジットカードを解約するよう頼み、何者かに狙われていると話したのだ。

「息子が危険にさらされていると思いました。電話越しに息子の心臓がドキドキするのを聞くことができました。息子は、人々が彼から金品を強奪したり殺そうとしていると言っていました」と母親のサンドラさんは語る。

 ホテルの防犯カメラには、ミッタンクが廊下を行ったり来たり歩き回ったり、エレベーターに隠れたりしているのが映っていた。翌朝、彼は再び母親に電話し、自分を追ってくる人々が近づいていると伝えた。

 7月8日、彼は母親に、空港にいるとテキストメッセージを送り、空港医務室の医師を訪ねた。

 医師は後にミッタンクが「神経質で不安定」な様子だったと話しているが、この時は飛行機に乗って帰るのは問題ないと伝えたのだった。

 しかし、ミッタンクは破裂した鼓膜をまだ心配しており、建設作業員が医務室に入ってきた時、ミッタンクは急に「死にたくない」と叫びながら医務室から走って出て行った。その様子は監視カメラにも写っている。

【未解決】「世界ー有名な行方不明の観光客」失踪前、母親に不気味な電話も
(画像=画像は「YouTube」より ,『TOCANA』より 引用)

ミッタンクは財布、携帯電話、パスポートを含む自分の荷物をすべて放棄して空港の外へと出ていったのだが、それ以来、ミッタンクは行方不明のままである。

 身元が判明しているうえに、逃げ出す様子も監視カメラにはっきりととらえられていることから“世界一有名な行方不明の観光客”とも呼ばれているミッタンクはどこへ行ったのか。本当に何者かに狙われて連れ去られたのか。それとも“タイムスリップ”や“クォンタムリープ”が起きたのか。まさに雲をつかませるような未解決の失踪事件である。

文=仲田しんじ

提供元・TOCANA

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