読者目線は大切ですが、迎合していては伝わる文章にはなりません。文章に限らず、言葉は自信のある論調にしたいものです。そのためには、「断定して言い切る」ことの重要性を理解しましょう。
今回は、文章術に関するエッセンスを紹介します。
読者にこびないことまずは、次の文を読んでください。
東大に合格するなら、この参考書を読むべきだ。 東大に合格するなら、この参考書はいいかもしれません。1のほうが、2よりも説得力があるように感じませんか。
ほかのケースで考えてみましょう。イメージしやすいようにテレビ番組の実例から引用します。
ここはモナコ、モンテカルロ絶対に抜けない! ここはモナコ・グランプリのサーキットです。抜くのが大変です!これは、1992年F1モナコGP(5月31日決勝)で実況をしていた三宅正治さんの実況です。この日はルノーのナイジェル・マンセルがトップを快走していました。残り8周、マンセルが緊急ピットインをしタイヤ交換を行います。
ピットアウトした時にはすでにアイルトン・セナ(ホンダ)が先行していました。マンセルは、残り3周でセナに追いつきアタックを試みますが、セナはマンセルを懸命にブロックして抜かせません。この時に発せられたのがこの言葉です。
「ここはモナコ、モンテカルロ絶対に抜けない!」
中には、「それはテレビの音声」「文章とは関係ない」という人もいるかと思います。
当時は、いまのように見逃したらすぐに動画アップされているような時代ではありません。年末のF1総集編でようやく多くの人がレースの光景を目にすることになりますが、それまでは、文章で語り継がれるしかありませんでした。
翌日以降、新聞、雑誌にはレースの模様が描写され、「ここはモナコ、モンテカルロ絶対に抜けない!」の文字が躍ります。レースを見ていない人が活字を読みながら熱狂していたわけです。