太陽は約11年周期で活動が活発化する「太陽極大期」を迎える。この時期には、地球に向かって巨大なエネルギーを放出する太陽フレアやコロナ質量放出(CME)と呼ばれる現象が頻繁に発生する。近年、私たちが目にする美しいオーロラは、この太陽活動の活発化によるものだ。

 しかし、太陽嵐は地球を周回するインターネット衛星やGPS衛星に影響を与え、数週間にも及ぶ通信障害を引き起こす可能性もあるという。

NASAが太陽極大期の到来を確認

 NASA、アメリカ海洋大気庁(NOAA)、専門家によるグループの太陽活動周期予測パネルは、合同記者会見で、太陽が太陽極大期に突入したことを正式に発表した。太陽極大期は、今後12か月間続く可能性があるという。

 NASAの宇宙天気プログラム責任者であるジェイミー・フェイバーズ氏は、「太陽極大期には、黒点の数が増加し、それに伴い太陽活動も活発化します。この活動の増加は、私たちに最も近い恒星について学ぶためのエキサイティングな機会を提供してくれますが、同時に地球や太陽系全体に現実的な影響を及ぼします」と述べている。

また、NOAAの宇宙天気運用責任者であるエルサエド・タラート氏は、「太陽は太陽極大期に突入しましたが、太陽活動がピークに達する月は、数ヶ月後、あるいは数年後にならないと特定できません」と付け加えている。

太陽フレアとCME  地球は太陽から平均約1億5000万キロメートルの距離に位置し、太陽から光と熱だけでなく、様々な影響を受けている。

 太陽は電気を帯びた高温のガスでできた巨大な球体であり、その動きによって強力な磁場が発生する。この磁場は地球の磁場と同様に、太陽の両極から伸びており、「双極子磁場」と呼ばれている。

 双極子磁場は、「太陽活動周期」と呼ばれるサイクルを経て、約11年ごとに完全に反転する。つまり、太陽の北極と南極が入れ替わるのだ。

 太陽活動周期の始まり(反転直後)には、太陽の表面にある黒点の数は最も少なくなる。太陽活動周期の真ん中は「太陽極大期」と呼ばれ、黒点の数が最も多くなる時期である。そして、この太陽極大期には、太陽嵐と呼ばれる激しい宇宙天気現象が発生しやすくなる。

 幸いなことに、太陽嵐は人間に直接的な害を与えることはない。しかし、地球を周回する人工衛星や、地上の電力網に影響を与える可能性がある。

 インドにあるIISERコルカタ宇宙科学センターの物理学者、ディビエンドゥ・ナンディ博士は、「太陽黒点の数が多いと、太陽嵐が発生する確率が高くなります。最も激しい太陽嵐は、地球の低軌道にある衛星を壊滅的な軌道減衰に陥らせ、通信や航法ネットワークなどの衛星ベースのサービスを混乱させる可能性があります。また、高緯度地域にある電力網に強い擾乱を誘発し、停電を引き起こす可能性もあります。もちろん、美しいオーロラも発生させるので、2024年はオーロラハンターにとって良い年になるでしょう」と語っている。

インターネットに壊滅的な被害? 2021年にカリフォルニア大学アーバイン校の科学者が発表した研究によると、深刻な太陽嵐が発生した場合、インターネットが数週間麻痺する可能性があるという。これは、世界中に張り巡らされた海底通信ケーブル網の脆弱性によるものである。

 激しい太陽嵐によって引き起こされる電磁波の変動は、インターネットのバックボーンを構成する光ファイバーケーブルに直接的な損傷を与えることはない。しかし、長距離通信を維持するために必要な、海底ケーブルに設置されている信号増幅器を破壊する可能性があるのだという。

 この研究では、今後10年間で壊滅的な被害をもたらす太陽嵐が発生する確率は、1.6~12%と予測されている。

NASAが“太陽活動の極大期”の到来を確認! 世界規模のインターネット障害発生の可能性も…太陽嵐がもたらすリスク
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)