たった2カ所の変異が犬の行動を変えていました。
日本の麻布大学で行われた研究によれば、遺伝子に起きたたった2つの変異が「人間のジェスチャーを読み取る能力」と「人間への依存度」を変化させていたことが判明した、とのこと。
研究内容の詳細は2022年6月9日に『Scientific Reports』にて公開されています。
犬と人間をより親密にしている遺伝子を発見!
イヌの家畜化には多くの遺伝子変異がかかわっていると考えられていますが、どのような遺伝子が、どのような変化を起こしているかといった、具体的なことはあまり明らかにされていません。
そこで麻布大学の研究者たちは624頭の犬に対して、2つの課題を使って社会的な認知能力を調査し、結果に影響を与えている遺伝子を探索しました。
1つめの課題は人間のジェスチャーなどを頼りにエサを探す犬のコミュニケーション理解力を測定し、2つめの課題では解決困難な問題に直面したときに、犬が人間を見つめる頻度と長さを測定し、犬の人間に対する依存度が調べられました。
結果、秋田犬やシベリアンハスキーなどオオカミに近い古代種に比べて、テリア系やトイ系などオオカミから遠い一般種のほうが、ジェスチャーの理解度が高く、解決困難な問題では人間により多く視線を向けて強く依存することが判明します。
古代種と一般種の違いはイヌの家畜化の過程で起きた2段階の変化を反映したものになっています。
1回目はオオカミからイヌ(古代種)への変化であり、2回目は古代種から現代的な一般種への変化とされています。(※諸説あり)
これまでの研究では全体的な傾向として、古代種は一般種に比べて人間に対する愛着行動が低いことが示されています。
また課題から得られた違いを反映する遺伝子の変化を調べたところ、ストレスホルモンの生産にかかわる遺伝子「メラノコルチン2受容体遺伝子」の2カ所において一般種では変異が起きており、古代種と異なるパターンを示したことがわかりました。
この結果はメラノコルチン2 受容体遺伝子に起きた変異が、イヌと人間との交流を促進させる効果があることを示します。
研究者たちは、メラノコルチン2 受容体遺伝子の変異によって犬の恐怖の感じやすさと攻撃性が低下し、人間とより積極的にかかわるようになっている可能性があると述べています。
参考文献
Genetic clues to how dogs became man’s best friends
元論文
Identification of genes associated with human-canine communication in canine evolution
提供元・ナゾロジー
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