まるで漫画のような話だが、この世には痛みも不安も感じない”最強すぎる遺伝子”を持った人物が実在する。英スコットランドに住むジョー・キャメロンさんは、非常に稀な「痛みを感じない」体質でありながら、65歳を迎えるまで自身が特殊な人間であることに気づかなかったそう。

 医師の薦めのもと、ジョーさんは遺伝学研究に参加。2019年に専門誌「British Journal of Anaesthesia」に掲載された論文によると、研究の結果、彼女の体内には、別名「至福物質」とも呼ばれるアナンダミドが通常の2倍蓄積されており、大麻使用時に似た多幸感を生み出していることが判明したという。この不思議な体質は、疼痛の治療や鎮痛剤の開発の大きなヒントとして、今後、世界中の人々を痛みから解放する手助けになるかもしれない。

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※ こちらの記事は2019年3月31日の記事を再掲しています。

 英国に住む71歳の女性、ジョー・キャメロンさんは痛みも不安も感じないという世にも稀な体質を持った人物だ。普段からやけどや切り傷を負ってもまるで痛みを感じず、手術を受けても痛み止めを必要しなかったという。最近になって、その遺伝子的なメカニズムが判明した。一体、彼女の体内では何が起こっているのか?

痛みや不安がまったくない幸福すぎる女性の謎! 多幸感が持続し続ける最強遺伝子の秘密とは?
(画像=ジョー・キャメロンさん 画像は「BBC」より引用,『TOCANA』より 引用)

ジョーさんは英スコットランドに住み、夫と2人の子供がいる陽気で明るいおばあちゃんだ。信じられないことだが、彼女は65歳になるまで自分が特殊な人間であることを知らなかった。手の関節炎で手術を受けた際に初めて、ジョーさんは自分が非常に稀な「痛みを感じない」体質だと知ったのである。

 手術には痛みや不安がつきものであるが、ジョーさんにとってはそうではないらしい。彼女が術後の痛みを抑える鎮痛剤の投与を断ったとき、最初医師たちはジョークだと思ったそうだ。医師たちはジョーさんの過去の怪我や病気について調べて、その言葉が本当だとようやく理解した。彼女はその前年にも重度の腰の変形性関節症と診断されていたが、それにも関わらず痛みを訴えておらず、やはり手術後に鎮痛剤を使っていなかったのである。

 医師たちにその変わった体質を指摘されて初めて、ジョーさんは自分が「非常に健康」なわけでもないのに、これまで全く痛みや不安を感じていなかったことに気づいた。彼女には腕を骨折したりひどいやけどを負ったりした経験もあるというが、骨折の時は腕があらぬ方向に折れ曲がっているのを見るまで、やけどの時は肉が焼けるにおいが漂うまで、自分がひどい怪我をしていることにさえ気づかなかったというのだ。もちろんそれは子どもたちを出産した時も同様で、BBCのインタビューに対して「とても奇妙な経験でしたが、痛みはまるでありませんでした。とても楽しかった」と語っている。

 またジョーさんにはストレスや不安感も少ないようで、うつ状態かどうかをチェックするテストでは毎回非常によい結果が出る。どんな時でも冷静さを失わず、交通事故に遭っても平然としていたそうだ。そして彼女はとても楽観的で陽気な性格で、自分でも「私は私が幸福であったことを知っていました」と話すほど幸福感に満たされている。何ともうらやましい話であるが、その一方で物忘れは激しいようで、記憶にも長期の欠損が生じているという。だが、それを不安に感じることはない。

 ジョーさんの体にはさらに不思議な特徴がある。痛みとは警告のサインであり、致命的な怪我を避けるためにも重要な感覚だ。それがないジョーさんはこれまでに数多くの大怪我をしているというが、その回復は非常に早く、傷跡もあまり残っていないというのである。

 医師の薦めもあり、ジョーさんは英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンやオックスフォード大学の遺伝学研究に参加することになった。そしてこの3月、彼女の体質の秘密を解き明かす論文が専門誌「British Journal of Anaesthesia」に掲載された。