都市伝説というものは、時としてある特定の分野の人々の間で知られている限定的なものも 存在している。その中に、医大生の間で伝わっていると言われる話がある。通称「壁に耳あり」と言われるものだ。
話しは基本筋として次のようなものである。ある大学の医学部に所属する学生が、解剖実習の際にメスで切り取った遺体の耳を持って壁に付け「壁に耳あり」と言った。その学生は死者の尊厳を冒す不謹慎だということで大学の退学処分となったという。
この話はバリエーションが豊富であり、学生については「非日常的な空間からくる緊張感から奇行に走った」というものや「実習に飽きてみんなを笑わせようとした」というものがあるという。
また、この他にも、目玉をくりぬきドアに押し当てて「障子に目あり」、口を縫い合わせて「死人に口無し」、そぎ落とした鼻を左右の手に置いて「両手に鼻(花)」、手足を切断して「手も足も出ない」などいわゆる体の部位を用いたことわざや慣用句によって多々見立てられている。
都市伝説自体は広く知られており、例えばマンガ『 金田一少年の事件簿』「魔犬の森の殺人」においても、この「壁に耳あり」の話を描写したストーリーが存在している。 本作品がこの都市伝説をモチーフとして描写したのであれば、 連載時期である1998年には、すでにこの噂は存在していたと考えられるだろう。
因みに、これに似たもので以下のようなものがある。 「昨日は海へ足を運んだ 今日は山へ足を運んだ 次はどこに運ぼうか 頭を抱えて悩んだ 実は昨日から手を焼いている」
これは、「意味が分かると怖い話」(通称「意味怖) にあるネタの一つで、「バラバラにした死体をあちこちへ運んでいる描写を表している」というのがオチとなっている。体の部位にまつわることわざ・ 慣用句を用いているという点では、壁に耳ありに通じるものがある。
「壁に耳あり」は、解剖実習時の教授によって語られる”やってはいけないこと”への注意事項の一つ、 もしくは学生の緊張をほぐすためのに言われるブラックなジョーク とも言われている。一方では、80年代から90年代にかけての薬害エイズや患者の取り違えといった多発する医療事故など、医療に対する不信感が反映されたことが、このような都市伝説が生まれたベースとなったのではないかとも考えられている。
【参考記事・文献】
山口敏太郎『ミステリー・ボックス コレが都市伝説の超決定版!』
壁に耳あり
【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】
【文 ナオキ・コムロ】
文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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