イングランド南部ウィルトシャー州にある「ストーンヘンジ」は、世界で最も有名な建築物のひとつです。
紀元前2500年ころに作られていますが、その製作意図は定かでありません。
儀式、死者の埋葬、天文台、パワースポットなど、さまざまな説が唱えられています。
その中で今回、ボーンマス大学(Bournemouth University・英)の研究により、「古代の暦(カレンダー)」説が有力であると発表されました。
カレンダー説は以前からあったものの、どんな仕組みで機能していたかは分かっていませんでした。
しかし本研究によると、ストーンヘンジは「太陽暦」として設計されたようです。
研究の詳細は、2022年3月2日付で科学雑誌『Antiquity』に掲載されています。
目次
ストーンヘンジは「カレンダー」なのか?
「太陽暦」としての仕組みを解明!
ストーンヘンジは「カレンダー」なのか?
ストーンヘンジには、ある太陽の動きに合わせた明確な造りがあります。
それが「夏至」と「冬至」です。
1年で最も昼が長い夏至の日になると、ストーンヘンジの入り口にあたるヒール・ストーンから太陽が昇り、日光が中央に向かってまっすぐ差し込むようになっています。
そして、1年で最も昼が短い冬至の日になると、同じラインの反対側が日没方向となります。(時計の12時と6時のラインを想像してください)
つまりストーンヘンジは、夏至の日の出と、冬至の日の入りを見通せるように設計されているのです。
ここから「カレンダーとしての機能があるのでは?」と示唆されていましたが、他に並んでいる石が暦とどう関係するのか分からず、今日まで実証されていませんでした。
しかし2020年の研究で、ある事実が判明し、この説に進展がありました。
ストーンヘンジの大部分を構成する「サルセン石」が、すべて同じ産地のものであり、同時期に設置されていたのです。
つまり、これらの石が一つのユニットとして、何らかの機能を持たせられたと考えられます。
本研究主任のティモシー・ダーヴィル(Timothy Darvill)氏は、これら石の配置が暦と関係していると考え、調査を開始。
古代の数秘術や、同じ時代に存在した暦法を調べ、ストーンヘンジと照らし合わせました。
結果、ストーンヘンジは、365.25日の太陽暦にもとづくカレンダーであることが濃厚となったのです。
実際に、その仕組みを見ていきましょう。
「太陽暦」としての仕組みを解明!
太陽暦とは、地球が太陽のまわりを回転する周期をもとにした暦です。
周期は約365.25日で、1年を365日とすると4年でほぼ1日のズレが生じます。このズレを調整するために閏日(うるうび)が設けられています。
さて、ストーンヘンジの太陽暦は、ダーヴィル氏いわく「非常にわかりやすい仕組みになっている」という。
ここからは、下のストーンヘンジの配置図を参考にしてください。
まず、外側の輪には全部で30個のサルセン石があり、1個が1日を表します。
これが10個ずつ、3つの週(Decan1〜3)に分けられて、円1周で1カ月となります。
ちなみに、円中央の赤線の上側が夏至、下側が冬至の方向です。
1カ月30日、これが12カ月で360日になります。
そして足りない5日分は、円の内側に配置された5つのトリリトン(3つの石を組み合わせた門型の構造物)が担います。
ダーヴィル氏は、この5日を閏月として追加したと指摘し、これで365日となります。
ただ、太陽暦の周期は365.25日なので、先ほど言ったように、4年で1日のズレが生じます。
その4年に1度やってくる閏日を数えるために、ストーンヘンジの四方に配置されたステーション・ストーンを目印としたと考えられます。
さらに、太陽暦の機能を果たすことで、毎年同じ石のペアの間を通して、夏至と冬至が見られます。
「これは、日付のカウントの誤差をチェックするのに役立ったでしょう」とダーヴィル氏は指摘します。
夏至の日だと思っていたのに太陽の位置がズレていたら、何日分ズレていたか一目で分かるからです。
以上のことから、ストーンヘンジは太陽暦と見て間違いないようですが、こうした暦法は当時から存在したのでしょうか?