パラグアイの検察官を暗殺したのはブラジルの犯罪組織

南米パラグアイ出身の検察官マルセロ・ペッチ氏(45)が新婚旅行中のコロンビアで殺害された事件に関してこれまで5人がメデジン市で逮捕された。そして現在、コロンビアの警察は6人目の共犯者を追跡中だ。

現在までの調査で判明しているのは、この暗殺を背後で仕切っていたのはブラジルで「PCC(州都第一コマンド)」と呼ばれている最強の犯罪組織であったということが明らかとなっている。

パラグアイは南米で大麻の最大生産国

パラグアイの検察官がなぜブラジルの犯罪組織と関係しているのかという理由の解明には現在のパラグアイが置かれている事情が影響している。現在のパラグアイは大麻の南米での最大の生産国であり、またボリビアからのコカをパラグアイに送り化学的に調合してヨーロッパやアフリカに密輸する基盤となっているからである。

ペッチ検察官はパラグアイの犯罪組織の取り締まりの主任として活動していた。彼の調査の対象のひとつになっていたのが、犯罪に強力な影響力をもっているPCCの動きの監視であった。

更にペッチ氏の調査を複雑にしていたのは、犯罪がパラグアイの政治家と癒着していることである。ペッチ氏の調査の影響で刑務所に送られた政治家もいる。ということからペッチ氏にとって敵は犯罪組織以外に法を守るべき政治家もいたということなのである。

暗殺者に支払われた金額は50万米ドル

逮捕された5人の共犯者の公判で明らかになったのは、ペッチ氏を暗殺するのに支払われた金額は20億ペソ(50万米ドル)。この5人のシカリオ(暗殺者を指す呼び方)はペッチ氏と夫人の追跡を開始していたが、途中彼らがどこにいるのか不明となっていたという。ところが、彼ら夫婦がイースタグラムで新婚旅行のルート並びに出産が間近いことを知らせた。それがシカリオが彼らの居場所を見つける道しるべとなったのである。

更に、検察は今回の事件の証拠固めとしてこれまで200の証拠物件の提出、2500時間のビデオ、67回の交信傍受、共犯者の通信会話内容の分析などから逮捕された共犯者の4人が犯罪を認めている。唯一犯罪を否定しているのはフランシスコ・ルイス・コレア氏だ。彼はコロンビアの元軍人で、これまで既に2回ほど収監していたことがある人物だ。検察は彼が今回の犯罪の計画者だと見ている(6月8日付「エル・パイス」から引用)。

今回の暗殺で明らかとなったのは、彼らの身の安全を守るSPがついていなかったということだ。というのも、これまでペッチ検察官には脅迫状などが届いていなかったというのが理由だったとされている。

またイースタグラムなどソーシャルネットの怖さを知らせる事件でもあった。

文・白石 和幸/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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