黒坂岳央です。

「子供に英語力をつけさせたい」。英語を教える仕事をしている筆者の元には、母親からのこのご相談はこれまで何度も頂いてきた。その気持ちはよく分かるし、できる限りのアドバイスはさせてもらうようにしている。

だが、現実的な話をすると、これはそう簡単な話ではない。親が子供に「英語力」を授けるには、親自身が英語力、そして日本語の国語力を有する必要があるからだ。「自分は英語に挫折したから」という雪辱を果たすため、英会話スクールに我が子を預けて英語をものにできたという事例は一般的ではない。そう考えるとなかなか難しい。

自分自身が我が子に英語を教えている経験値から論考したい。

mangpor_2004/iStock

子供に英語を教えて感じた学習の壁

我が家では自分の子供に英語を教えている。その結果、感じたことは子供に英語を教えることは簡単ではないという事実である。

まず、子供は楽しくないと絶対にやらない。「将来、英語ができれば得をするから」という実用性を話してもまったく乗らない。これは冷静に考えると当たり前である。子供に実用性の話が通じるなら、教育ママの子供は全員難関大学に進学しそうなものだが、実際はそうなっていない。この状況証拠からも明らかである。だから英語教育を楽しいと感じさせる必要がある。だが、これが簡単ではない。子供は集中力がなく、すぐ飽きて放り出す。多くの親はそうした時に対処法がわからないはずだ。そして、英語学習は継続して反復しなければ身につかないから、継続できずに挫折する。これが最初の壁である。

さらに、子供はかなり難しい質問をしてくる。「seaとoceanってどう違う?」「アメリカとイギリスの英語はなぜ発音が違う?」「cloudとcloudyは同じ意味?」このように英語が得意でない大人にとっては、即答が難しいような質問をバンバン出してくる。質問を放置してしまえば、子供は疑問が解消されないのがストレスとなり関心を失うだろう。だからこうした質問に対して、子供に分かる言葉で回答するためにも、親は英語、日本語の国語力が必要になる。

最後に子供だからといって、大人よりずばぬけて記憶に有利ではないということだ。我が家では、500語の英単語の暗記は大人以上に時間がかかってしまったし、英語力が非常に高い知人のママも大変苦労したと語ってくれた。「子供は大人に比べて有利」というのは、あくまで脳の機能的な話に過ぎず、実際には手取り足取りついて教えても、そもそも大人と違って論理的ではなく、頭の使い方や精神的な幼さがハードルになるので「子供は脳が若いから有利」とは言い切れない事実がある。

勝手に伸びていく子どもたちはどう作る?

だが、時々自主的に学び勝手に成長していく子供を目にすることがある。これはどういうことだろうか?

幼少期から本が大好きで、洋書を与えたらぐんぐん読んで最終的にTOEIC900点、英検1級合格した子供もいる。その子の親に直接話を聞いた。その時に感じたことは「元々の遺伝子がかなり優秀」ということである。父親は難関大卒、母親も英語が得意で親子で洋書を読むような家庭だったという。つまるところ、生まれつき賢いという結論だ。この子と同じ環境を作って他の子供に提供しても、大多数はそうならないだろう。

他にも、幼稚園児が世界の国旗すべて暗記したり、大人顔負けの発音を見せる事例もあるが、こうした事例も元々抜群に才能がある可能性が高い。「この勉強法をすれば、子供は全員伸びます」みたいな一般化できる学習法があるとは思えない。外国語学習は本人の意欲と学習法に依存する。これらの例外は例外と認識した上で、再現性のある勉強法を探るのが現実的アプローチではないだろうか。

そうなると、まだ未熟な子供に対して「必ず力がつく英語学習法」を見つけることは難しいという結論に至る。子供は興味関心でしか動かない。絵本や英語YouTube動画を見せたり、親が外国事情などを話しをみせて興味を持たなければ、もう子供の気を引ける手段がほとんどない。仮にそうなった場合、さらなる心身の成長を素直に待つのが現実的なのかもしれない。もとい、幼児期に無理に英語教育をゴリゴリすることが好ましいかもわからなくなってくる。

自分自身、英語は23歳から勉強を始めたが、なんとかなった。英語を教える受講生の中にも、60代でTOEIC900点を超えた方も輩出できた。英語は幼児期から始めなくても身につく。あまりにも我が子の英語教育に熱心になるよりも、幼児期にしかできない遊びや心の成長を促進する体験をするべきなのかもしれない。

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