現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、うえまつそうの新連載「島流し奇譚」。この連載では現役教師ならではの他にはない実話怪談を紹介する。第13回目となる今回は、タクシー運転手に聞いたという「ウェディングドレス」にまつわる実話怪談。

深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談
(画像=『TOCANA』より 引用)

 先日、上野駅からタクシーに乗った際に運転手さんから聞いたお話。タクシーに乗るといつも運転手さんに「怖い話ないですか?」と聞くのがもう数年前からのライフワークとなっているが、8割以上の方は怖い話がないという。

 今回の運転手さんも「特にタクシーで怖い思いをしたことはないですね。平和なもんです」と、ニコニコと人の良さそうな笑顔が背中越しからも運転の丁寧さからも伝わる。

 数分走ったところで「あ、そういえばタクシーやる前に…20代前半の頃のお話でしたらあるのですが」と現在54歳の男性運転手がゆっくりと体験談を聞かせてくれた。

 この運転手Aさんがタクシーの仕事に就く前、23歳の頃に当時東京で付き合っていた彼女を山梨県の実家の両親に会わせたいと、ある日の深夜に助手席に彼女を乗せ車で実家に向かっていた。

 深夜ということもあり、空いている国道20号線を走っていると数百メートル先の道路のど真ん中に米粒ほどの大きさの白い何かが見えた。そのまま近づいて行くと、どうやら人間のようだ。さらに近づくと分かったことが、この時間この場所に似つかわしくない真っ白なウェディングドレスを着た女性だったのだ。

深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

 真夜中の道路にウェディングドレス姿の女性がいること自体がおかしいのだが、徐行しながらさらに近づくと、その女性がこちらを向いてゆっくり手を振っている。髪の毛がまるで貞子のように顔を覆っているので表情は分からず。

「なんだ?気持ち悪いな…」

 そう思いながらさらに徐行し、停車して様子を伺おうとした時に気づいた。

 その女性、髪の毛を前に垂らしてこちらを向いているのではなく、後ろ向きで立っていてボキボキと折れ曲がった左腕でこちらに手を振っていたのだ。

 さすがにびっくりしたAさんは、誤ってブレーキではなくアクセルを踏んでその女性を轢いてしまった!

 …が、車に衝撃はなく、まるですり抜けたかのように女性は車の後ろに立っていた。

 バックミラーでその様子を見ていたAさんが恐怖で動けずにいると、その女性はおもむろにゆっくりゆっくりとこちらに向かってら歩いてくる。

 やばい、どうしようと思いながらも助手席にいる彼女を落ち着かせなくてはと話しかけようとしたところ…彼女は助手席におらず、忽然と姿を消していた。

 そして改めてバックミラーでウェディングドレスの女性を確認すると、その女性の顔が先ほどまで助手席にいた彼女の顔に変わっていたのだ。

 意味が分からずパニックになっているAさんをよそ目に、その女性はゆっくりゆらゆらと車に近づいてくる。そして、数メートル歩いて車の真後ろまで来ると、突然、トランクに手をかけ、バン!と勢いよく開けた。そして、ガタガタバタバタン!と音を立てながら、トランクの中に飛び込んだのだ。

深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談
(画像=イメージ画像 Created with DALL·E,『TOCANA』より 引用)

 何が起きたのか分からずだがAさんはドアを開けてトランクまで駆け寄り、中を見てみると…そこには真っ白なウェディングドレスだけが詰め込まれていた。

「そんな体験をしたんです。あれ以来僕の彼女、2度と現れなかったんです。どこに行ってしまったんでしょうね」

 そんな悲しくも不思議なお話をそれまでと変わらずニコニコと話す運転手さんに恐怖を覚えた。そんな2024年の夏に聞いた一番怖いお話。

深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談
(画像=『TOCANA』より 引用)

文=うえまつそう

提供元・TOCANA

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