15日に公示された衆院選では、物価高への対応を含む経済政策が大きな争点となる。主要各党は公約で賃上げと給付措置を重視。自民党が増税や緊縮色を打ち消す一方、野党は減税で対立軸を明確にした。ただ、石破茂首相就任から間もない短期決戦のため、財源や成長戦略は十分に示せず、バラマキ合戦の様相を呈している。
自民の経済公約は、賃上げと投資拡大でデフレ脱却への道筋を付ける「岸田路線」を踏襲した。「石破カラー」がにじむ政策は、地方創生交付金の倍増などごくわずか。「政治とカネ」問題への厳しい世論に配慮し、首相の持論とされた金融所得課税強化や法人税増税といった「負担増」を伴う課題は鳴りを潜めた。
与野党の公約は最低賃金引き上げではほぼ一致する。首相は2020年代に全国平均を時給1500円にする高い目標を掲げているが、自民の公約は金額や時期を示さず「引き上げ加速」にとどめた。野党側は立憲民主党と共産党が最低賃金1500円以上、国民民主党は「全国どこでも時給1150円以上」をうたう。
金融政策で独自色を出したのが立民。日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更し、政府・日銀の共同目標に「実質賃金の上昇」を加えると公約に明記した。ただ、デフレに逆戻りする印象を与えかねないとして波紋を広げている。
与野党は物価高抑制や格差是正のために分配政策を重視する点でも似通う。自民、公明両党は低所得世帯向け給付金や燃料費高騰対策で共同歩調を取り、野党では立民が低所得者向けの年金上乗せを公約に盛り込んだ。
消費税の扱いは与野党で対応が割れた。首相は13日にテレビ番組で「引き下げることは考えていない。当面上げることも考えていない」と発言。一方、日本維新の会は消費税率8%へ引き下げ、共産と国民は5%への時限的引き下げを主張。れいわ新選組は消費税廃止、社民党は税率3年間ゼロ、参政党も減税を訴えた。
各党とも「大盤振る舞い」をアピールするが、政策の実現に欠かせない財源はほとんど示していない。首相は15日、今秋に策定する総合経済対策について「(昨年度を上回る)大きな補正予算を国会で成立させたい」と表明。選挙戦開始早々、規模ありきの姿勢を示した。
今回の衆院選は3年ぶりに政権選択の機会となるが、与野党の成長戦略も「リスキリング(学び直し)推進」や「グリーン、デジタルに重点投資」など新味に乏しい。日本総研の石川智久調査部長は「日本経済がデフレから完全脱却し、財政再建も同時に進められるような経済政策の道筋」が示されるべきだとしている。(了)
提供元・Business Journal
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