木星を周回するNASAの探査機「ジュノー」が、木星を取り巻く雲の内部の動きを捉えました。
これは目では見えない木星大気内部の激しい嵐の構造がどのようになっているかを理解するために役立ちます。
そして、このデータから木星のトレードマークとも言える大赤斑の嵐がどのくらいの深さまで広がっているかも明らかとなったのです。
報告された論文によると、大赤斑は雲頂から500kmもの深さまで続いているといいます。
これは地球に置き換えた場合、地上から国際宇宙ステーション(ISS)が浮かぶ軌道上よりも長い距離です。
ジュノーによる研究の詳細は、10月28日付で科学雑誌『Science』に2つの論文で発表されています。
科学者の予想よりもずっと深かった木星の大赤斑
木星は長く人類に観測されてきていますが、巨大なガス惑星である木星は分厚い雲に覆われていてい、その雲の下がどのようになっているかは詳しくわかっていません。
特徴的な縞模様は、猛烈な嵐によって運ばれる雲であり、その表面に浮かぶ大赤斑と呼ばれる赤い斑点も、数百年以上続いている嵐の渦です。
写真で見た場合、スケール感がよくわかりませんが、大赤斑は地球の2.5倍ものサイズであることがわかっています。
しかし、それは2次平面的に見た面積においての話です。
この分厚い雲の下で、この巨大な大赤斑の嵐がどのくらいの深さまで続いているのかはわかっていませんでした。
しかし、新たな研究は、大赤斑の深さが雲頂から500kmも広がっていることを明らかにしたのです。
500kmという高さは、即座にピンとは来ない距離ですが、現在さまざまな宇宙研究の拠点となっている国際宇宙ステーション(ISS)が浮かぶ高度は、地上から約300~400kmです。
つまり大赤斑はISSが浮かぶ位置より、さらに大きく広がった構造を持つ嵐だったということが明らかになったのです。
では、これまで見ることのできなかった木星の雲の下に広がる、このような事実は一体どうやって明らかにされたのでしょうか?
木星大気の内部を探る2つの研究
今回の調査結果は、NASAの木星探査機「ジュノー」の異なる2つの計測器を用いて、それぞれ行われた2つのグループの研究のおかげです。
1つ目のグループは、大赤斑の重力を測定しました。
「ジュノー」の重力計器を幅1万6000kmある大赤斑の嵐に向けてみたのです。
小さな質量の変動から、気候プロセスなどを調べる方法は、地球でもNASAのGRACEミッションというものが実行されています。
そのため、これは単純なアイデアでしたがジュノーのミッションではもともと予定されていないものでした。
この測定から何かが発見できる確証はありませんでしたが、NASAジェット推進研究所のマルツィア・パリシ(Marzia Parisi)氏は重力測定を提案し、承認を受けて今回の研究を行いました。
結果、この研究は木星の重力場の変動を拾い上げ、大赤斑の嵐の深さが500kmに達することを明らかにしたのです。
また、同時に別のグループが、ジュノーに搭載されたマイクロ波放射計を用いて惑星大気の探査を行いました。
これも嵐の深部を調べ、垂直方向に対してどのように嵐が変動しているかを確認したのです。
するとこちらの研究でも予想外に深い位置まで、嵐の動きが続いていることを発見しました。
それは木星に浮かぶ雲の位置よりもさらに下であり、大気中のアンモニアと水が凝縮するポイントまで続いていました。
これらの調査を合わせて、今回大赤斑の深さは500kmも広がっているという結果が報告されたのです。
また今回の調査からは、この大赤斑の嵐が、さらにずっと深い場所(約3200km)に達する、木星下層大気のジェット気流から力を供給されている可能性も示されました。
これは巨大な惑星の上層大気と下層大気が、大赤斑の大渦で接続されていることを示唆しています。
最近の研究では、木星と同じ巨大ガス惑星である土星の中心は、固体のコアがない可能性が示されており、同じガス惑星である木星も、固体のコアなど持たない可能性があります。
明確な地面やコアを持たず、どこまで深く流動する物質が続くガス惑星は、まだまだ謎に満ちた存在です。
今回の研究は、そうした木星の理解を深めるための一助となりそうです。
提供元・ナゾロジー
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