タスキギー梅毒実験は、倫理を無視した科学がどのような悲劇をもたらすかを示す、恥ずべき教訓である。1930年代初頭、現在のCDCの前身である連邦公衆衛生局(PHS)が実施したこの実験では、アラバマ州の農村部に住む400人以上の黒人男性が、梅毒の治療を意図的に受けられないまま放置された。
研究に参加した黒人男性たちは、治療を受けられると信じさせられていたが、実際には嘘をつかれ、適切な治療が施されることはなかった。地元当局もこの非人道的な実験を40年間にわたって見過ごし、参加者たちは人間モルモットのように扱われていた。この恐ろしい実験が終了したのは、1972年、ソーシャルワーカーの内部告発者がこの悲惨な状況をメディアに暴露したことがきっかけだった。
それだけでは終わらず、2010年には、同じ研究グループが1940年代にグアテマラで梅毒や淋病の新しい治療法を試すため、数百人の男性に意図的に感染させていたことが明らかになった。しかし、またしても彼らは、自分たちが何をされているのかまったく知らされず、研究の目的も隠されていた。
医学誌「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に掲載された論説の中で、ハインズ退役軍人病院とロヨラ大学シカゴ・ストリッチ医学部のマーティン・トビン博士は、この時代の暗黒面を再考し、同様のことが二度と起こらないようにするための重要な教訓をいくつか挙げている。
「読者は、生命倫理の教科書で研究倫理に関する抽象的な原則を読むよりも、タスキギー研究について学ぶ方が、研究倫理についてより深い理解を得ることができる。この物語は、被害者、悪役、そしてヒーローといった実在の人物が登場する生き生きとしたストーリーであり、読者はこれらの人物を日常生活で出会う人々と重ね合わせることができる」
タスキギー実験(1932~1972年)は、患者たちがひどい扱いを受けたため、医学研究の暗い汚点として歴史に刻まれている。しかし、この研究が米国政府の最高の保健機関によって行われたという事実は、さらに不名誉なことである。
この実験の目的は、梅毒という細菌が引き起こす破壊的で生命を脅かす性感染症の未治療の影響を研究することにあった。最初の研究者たちがこの研究を開始した場所は、アラバマ州メイコン郡で、1932年当時の人口は27,000人、その80%以上が黒人だった。PHSの研究者たちは、参加者の募集を助けるために、元奴隷のブッカー・T・ワシントンが設立した黒人大学であるタスキギー・インスティテュートと提携した。
この研究では600人の黒人男性が募集され、そのうち399人は梅毒に罹患しており、201人は対照群として梅毒に罹患していなかった。これらの「ボランティア」のほとんどは、正規の教育を受けていない貧しい小作人で、白人農家の下で働いていた。彼らを参加させるために、メイコンの男性たちには無料の医療と、最も重要な埋葬保険が提供された。適切な埋葬はこのコミュニティにとって文化的に非常に重要だが、費用が高く、多くの人にとって手の届かないものであった。
タスキギー梅毒実験やグアテマラでの事件は、科学と医療が持つべき倫理の重要性を強く示している。この暗い歴史は忘れてはならない教訓なのだ。
参考:ZME Science
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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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