(3)実際の衛星画像を確認する

■光学衛星

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=Credit : JAXA、気象庁、『宙畑』より引用)

「地球観測衛星データサイト」で公開されている気象衛星「ひまわり」による噴火観測です。

気象庁から提供を受けたひまわりデータを、JAXAが等緯度経度格子に加工した上で可視化したものです。噴煙と衝撃波が火山島を中心とした円形に広がる様子が分かります。

・WorldView-3

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=Credit : Maxar Technologies、『宙畑』より引用)

Maxar Technologiesがオープンデータプログラムで公開した、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火前後の街のWorldView-3の衛星画像画像を左右に並べたもので、左側が噴火前、右側が噴火後になります。

WorldView-3の衛星画像は上述の通り、商用で購入できる衛星の中で最も高解像度で、住居の形もはっきりわかりますね。また、噴火後の衛星画像を見ると住居の屋根に火山灰が積もっている様子が分かります。

・Sentinel-2

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=『宙畑』より引用)

また、噴火によって火山灰が南にあったトンガの首都があるトンガタプ本島に降灰して影響を与えているとの発表がありました。WorldViewのtrue画像で見ると街並みが灰色になっていることは分かりますが、これが火山灰なのか、屋根の色なのかをきちんと判別することは人間の目では難しいように思います。

そこで、可視光以外の波長を用いて、火山灰か否かの判別ができないかを試してみた、というのが以下の画像です。

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=『宙畑』より引用)

「衛星リモートセンシングによる火山灰堆積厚把握手法について」によれば、植生以外の領域で NDVI(植生指数) の変化を調べることにあまり意味はないという前提があったうえで、降灰量が 10cm 程度まではNDVI の減少率と降灰量との間には比較的良い相関関係があったとあります。

実際に今回の噴火がどの程度の降灰量となったのかは分からない状態ではありますが、NDVIのデータを見ると、火山後の衛星画像では、植物があっただろう場所が白くなっていることが分かります。

・ASNARO-1

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=『宙畑』より引用)

ASNARO-1が捉えた噴火後の海底火山のデータもTellus上に公開されました。Sentinel-2よりも高解像度の衛星画像となっています。

・Sentinel-5P

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=『宙畑』より引用)

こちらはSentinel-5Pが観測した1月13日から19日までのSO2のタイムラプス画像です。観測できていない(観測値として値を保証できない)範囲はマスクされて赤色で塗りつぶされていますが、15日以降に噴火に由来すると推測される高濃度のSO2が西に流れているのが見て取れます。

・しきさい

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=Credit : JAXA、『宙畑』より引用)

海域火山である海底火山や火山島の活動状況の把握には、周囲に発生する変色水の分布や色の変化を見ることが有効なのだとか。実際に大噴火の前日には上記のような変色水が見られ、噴火後でも大規模な変色水が確認されたことで、引き続き火山活動が活発な可能性があると見られています。

■SAR衛星

・Sentinel-1

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=『宙畑』より引用)

Sentinel-1の衛星画像のタイムラプスを作成してみました。2021年12月22日の画像でも噴火が確認でき、2022年1月15日の噴火直後の衛星画像では海底火山の中心部が消失していることが確認できます。

・ALOS-2(earth.jaxa.jp/ja/data/policy/index.html)

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=Credit : JAXA、『宙畑』より引用)

JAXAからもALOS-2が捉えた噴火前後の海底火山の様子が公開されました。Sentinel-1でも見たものと同様に、中心部が消失していることが確認できます。

・ASNARO-2

9種類、10の衛星画像で見る、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山噴火の爪痕
(画像=『宙畑』より引用)

Tellusに公開されたASNARO-2の画像は噴火した火山ではなく、街の様子を捉えたSAR画像でした。ご覧いただくと、さすが高解像度のSAR画像、住宅の大きさや形が分かります。

(4)複数の衛星画像を眺めて考える、各種衛星画像の扱い方

今回、9機の地球観測衛星が取得した10枚の衛星画像を並べて紹介しました。火山の噴火という一つの事象に対して、様々な衛星画像が噴火の規模やその影響をそれぞれの強みを活かして私たちに教えてくれているということがあらためて分かりました。

今回の比較を通して、ここまで記事を読んでいただいた読者の方に、今後衛星画像を扱う上でぜひ覚えておいていただきたいことを3つまとめてみました。

①衛星画像の解像度ごとに、分かることは異なる

まず、当たり前の確認ができたという内容になりますが、衛星画像の解像度ごとに分かることの差があります。光学の人工衛星であれば、WorldView-3の衛星画像では、家ごとに状態の把握ができるのに対し、Sentinel-1の衛星画像では、降灰がざっくりとこのあたりにあっただろうということしか分からないですね。

つまり、何を見たいかによって、衛星画像を使い分ける必要があるということです。

②SAR衛星は雲の影響を受けづらく、地上の状態を素早く把握する上では便利?

今回、光学衛星とSAR衛星では、噴火の状況を把握する衛星画像を撮影できたタイミングが異なります。今回の噴火については、雲や噴煙の影響を受けない特性があったSAR衛星の方が、地上の状態を私たちに先に教えてくれました。
※Sentinel-1の画像が1月15日、Sentinel-2が1月17日

何か衛星画像を見てみたい事象があり、地上の状態をまずは知りたい!という場合は、SAR衛星から先に調べてみるとよいでしょう。

※もちろん、各種地球観測衛星の回帰日数と天気によっては、光学衛星の方が先に地上の状態を把握できる可能性もあります。

③光学の地球観測衛星は様々な波長帯を観測しており、噴火の影響を把握する上で多様な使い道がある

冒頭の衛星画像の種類を解説した内容と重複しますが、SAR衛星が雲の影響を受けずに地上の状態が分かるという強みがある一方で、光学衛星は火山灰の降灰状況といった、SAR衛星では判別しづらい違いを人の目で見て確認しやすいという強みがあります。

SAR衛星で分かる地上の変化だけではなく、より詳細に遠隔地が変化した状態を知りたい場合は、光学衛星のデータが役に立つことが多いでしょう。

(5)まとめ

以上、1月15日に発生したトンガ諸島付近の大規模噴火の影響を9機の衛星画像で確認し、衛星画像とはなんぞやという内容とその衛星ごとの違いやデータそのものをあらためてご紹介しました。

今回はオープンデータとして配布されている、無料で紹介できる衛星画像のみを記事で掲載しています。今回のトンガの噴火については、Planet Labs社等も画像を撮影し、Twitter上で紹介していました。

また、本記事を執筆している1月下旬になっても、トンガ火山噴火起因の津波によるペルー沖油流出事故のオイル漏出の観測結果や、衝撃波が広がる様子をSAR衛星により観測したなど、トンガ諸島付近の大規模噴火に関連する衛星画像が続々と公開されています。

ぜひ、衛星画像で確認したい!という事象が発生した場合は、本記事に書かれた内容を参考にして、様々な衛星画像をご自身で探してみてください。

提供元・宙畑

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