彼岸花といえば、日本の秋を彩る植物の一つで、一斉に咲かせる真っ赤な姿が象徴的な花である。その名前の由来は秋のお彼岸ごろに咲くためとも言われているが、一方で有毒植物であることから食べると「彼岸に行く」(死ぬ)ことから名付けられたとの説もある。そのためか、彼岸花は不吉なイメージを持たれることも珍しくはない。
彼岸花の迷信は多い。「亡くなった人の血を吸って赤い花になる」「家に持って帰ると火事になる」といった、赤色にまつわるものから、「墓に飾ると天国へ行ける」「亡くなった人の家までの道しるべになる」「人の魂を吸い取る」といった、やはり彼岸という名からの連想か死に関係したものが目立つ。
中でも一際多いのは、彼岸花に接触したタイプのものだ。「彼岸花に触れると病気になる」というものもあるが、特に目立つのは「彼岸花を摘む」行為によるものであり、「災いが起こる」「手がしびれる・腐る」そして「死者が出る」といった非常に物騒な迷信となっている。
「手がしびれる・腐る」などは、前述したように彼岸花の毒性に由来しての教訓的な迷信であることが察せられるが、一方の「死者が出る」とはどういうことか。
日本各地の彼岸花は、その殆どが人為的に植えられたものであり、その大きな理由の一つは、地中の昆虫・ネズミ・モグラ除けだと言われている。彼岸花は球根に毒があるため、彼岸花を植えるとそういった害虫や害獣が近寄らなくなり、作物や土壌を守る役目を果たすのだ。畦道に彼岸花が多いのも、外敵に襲われず根を張って畔を固めてくれるためだと言われている。
そして、これと同様のことが墓地にも言える。かつて土葬が主流であった際は、そうした地中の害獣が遺体を荒らしてしまう恐れが往々にして起こっていた。そこで、墓所に彼岸花を植えることで遺体を害虫害獣から守ったというわけだ。
おそらくは、墓所に多くあるというイメージがあまりにも印象深く刻まれてしまった為、その毒性以上に死や災いのイメージが広まったのではないかとも考えられる。「死人花」「地獄花」「幽霊花」といった異名があることも、それを物語っている。
だが面白いことに、彼岸花はかつて非常食として食されていたこともあるという。彼岸花の球根は毒を含んでいるもののでんぷん質が豊富に含まれており、飢饉や食糧不足だった時代には、球根をすりつぶして何度も水にさらすという毒抜きが行なわれ、団子、雑穀などに混ぜられて食されていたという。
この際、完全に毒が抜き切れてなかった球根を食したために不調を訴えたというのが、毒による人への被害とその迷信につながったとも考えられるだろう。ひょっとしたら、非常食を持ち去られては困るという意味合いから恐ろしい迷信が流布された可能性もあるのかもしれない。
彼岸花はまた「曼殊沙華」という仏教において天界に咲くめでたい花の異名でも呼ばれている。人々の生活に根付き、土壌の被害や飢えから救うという彼岸花は、むしろありがたい存在であると言えるだろう。
文=黒蠍けいすけ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
提供元・TOCANA
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