相手が急いでいるとは限らない

割りこみタスクが発生したとき、君はどのように対応しているだろうか。「B社の資料をまとめておいてくれ」と上司から急に頼まれた場合などだ。ここで冷静になって考えなければいけないこと。それは「はたして相手はそんなに急いでいるのだろうか?」ということだ。

Google、NIKE、P&Gでトレーニングし、世界最大のスピーチイベントで最高ランクの評価を得たジュリエット・ファント氏。彼女は著書『WHITE SPACE ホワイトスペース』(東洋経済新報社)で「案外、顧客自身もそんなに急いでなかったりするものだ」とし、入院患者がナースコールを押す回数について病棟看護師と行なった調査結果にもとづいて、このことをわかりやすく説明している。

ナースコールに応じる時間が決まっていないとき、患者は緊急かどうかにかかわらず用事を思いついたらその都度ボタンを押した。しかし看護師が「毎時間始めに立ち寄りますね」と声がけしたところ、患者が即座にボタンを押す回数は減ったという。

看護師が次いつ立ち寄るか。その時間・タイミングを明確に示したことで結果的に患者は緊急のときを除き、次の巡回まで待つようになったのだ。

このケースから学べることはいくつかある。そのうちのひとつは「相手が必ずしも急いでいるとは限らない」ということだ。少なくとも昔の私は上司から「資料をまとめておいてくれ」と声をかけられた際、「早くやらないといけない」とすぐに仕事にとりかかっていた。

しかし先の入院患者と同じように、もしかしたら上司は思いついた時点で依頼をしているだけで「1週間後に提出してくれればいい」と思っているかもしれない。もしそのことが明確だったら、翌日以降にこの仕事に取り組んだはずだ。

しかし昔の私は「相手が必ずしも急いでいるとは限らない」という発想がそもそもなかった。上司やクライアントからの仕事は、なる早で対応・報告しなければいけないと勝手に思いこんでいた。結果的に相手の想定より早く仕上げて驚かれることも増え、次も期待されるようになる。こうして必要以上に自らの負担を増やしていった。

では昔の私はどうすればよかったのか。答えはしごく簡単だ。上司やクライアントから仕事を依頼されたら「いつまでにやったらいいですか?」と期限を聞けばよかったのだ。あるいは自分から「1週間後でいいですか?」と確認すればよかった。

ナースコールの例でわかる通り、対応するタイミング=締め切りを顧客に知らせれば相手の緊急度合いが明確になる。「1週間後でいいですか?」という質問に「いや、会議にかける前に確認したいから明後日までに頼む」と言われたら、相手の意図や目的もくみ取れるだろう。逆に相手が急ぎではなければ「問題ない」との返答でスケジュールの共通認識もとれる。場合によってはさらに猶予をもらうこともできるだろう。

割りこみタスクが発生したときは「相手は必ずしも急いでいるわけではない」ということを念頭に置こう。そして、相手に「いつまでですか?」と確認する習慣を持とう。これが割りこみタスクに対する基本的な姿勢・スタンスだ。この考え方を自分に浸透させるための効果的な方法がひとつある。紹介しよう。