今回、シンガポールの研究者たちは「量子もつれ」を起こす回路(量子ビット)にクマムシの体を直流で突っ込むという荒業を敢行しました。
クマムシを取り付けた回路を計測することで「量子もつれ」がクマムシの体に起きているかを調べることが可能になります。
これまでの研究により、量子的な効果がさまざまな物体にもみられることがわかっていましたが、多細胞動物では誰も調べたことはありませんでした。
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しかし、いったいどうしてクマムシが多細胞動物の代表として選ばれたのでしょうか?
結論から言えば、クマムシがもつ異常な生存能力のためでした。
クマムシは絶対零度に近いマイナス272℃から水の沸点を上回る150℃までの温度を生き延び、高線量の放射線にも耐えて、宇宙空間で10日間も生き延びることが可能です。
「量子もつれ」を起こすには絶対零度に近い温度まで回路を冷却する必要があるのですが、クマムシはそのような低温でも生存可能です。
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今回の研究でも420時間にわたりほぼ絶対零度、ほぼ真空という条件(0,01k・10億分の6気圧)において「量子もつれ」が確認されましたが、実験後にクマムシを暖かい場所に戻すと、蘇生して元気に歩き回る様子が確認されています。
死んで凍った死体で試しても面白くない
今回の研究によって、多細胞動物であるクマムシにも「量子もつれ」が観察されました。
かつて物理学者たちは多細胞動物のような生命には、量子効果はみられないと考えていましたが、クマムシの異能生存能力が予測を打ち砕くものになりました。
クマムシを量子回路に突っ込むという実験の、そもそもの意味を問う声もありますが、重用なのは、量子効果の確認が死体ではなく、生きている多細胞動物で行われた点にあると言えるでしょう。