バブルの賜物として初代「NSX」が登場したのは1990年のこと。その後、自動車業界・市場を取り巻く周辺環境が変化する中、種々の改良や延命工作が施されながら、初代NSXは実に15年というライフサイクルを過ごした。

かつては自動車メーカーが象徴として据えることも多かったスポーツカーだったが、2000年代に入ると、自動車は憧れの対象というよりも、住居のような快適性あるいは高級感などが求められるようになり、ニーズが大きく変容していった。

2005年に初代NSXが生産を終えたあとも、たびたびNSX復活待望論がクルマ好きの間で賑わいを見せたが、結局のところそれは現実のものとはならなかった。すでにホンダの主力も軽ハイトワゴン、ミニバン、クロスオーバーとなっており、かつての看板車種であった「シビック」ですら、日本国内では存続が危ぶまれていた時期である。

しかし、そこで終わらないのがホンダらしいところで、2012年の「デトロイトショー」で2代目NSXのプロトタイプを出品。ハイブリッドのパワートレインをミッドシップマウントし、それに4WD技術を組み合わせた最新フォーマットのスーパースポーツであった。その反響は大きく、2015年には市販車に限りなく近いプロトタイプを発表、そして2016年には市販が開始されることになった。

初代から受け継いだのは名前とミッドシップ・レイアウトくらいという、新型NSXは期待値の大きさからか、賛否両論を生むことになる。初代のピュアスポーツ感を期待した層にはハイテク感が仇となり、ランボルギーニなどのイタリア製のスーパーカーを夢見た層には”優等生すぎる”と映る。

生産台数的には3,000台に届かず、成功作と呼ぶには遠かったが、2021年には大幅改良版の「タイプS」を発表し、その350台のデリバリーを終えると共に、2代目NSXは初代に比較すれば1/3という短い人生を終えた。

ところが、最後のタイプSをドライブした多くの識者が口を揃えたのが、「最初からこの仕様で出ていれば、2代目NSXの評価はまったく別のものになっていたはず」ということ。タイプSは足回りや4WDシステムのセッティング変更、エクステリアは専用のフロントマスクやテールエンド採用して空力性能を大幅に向上させ、顔つきは押し出しの強い印象へと変化している。

さらにパワーユニットは3.5LのV6ツインターボエンジンの最高出力を22ps引き上げ529psへ、モーターも出力アップが図られており、併せてバッテリーも使用可能容量を20%拡大するなど、追加モデルの域を出た大改良が行われた。タイプSの完成度の高さは、ホンダファンにとっては何とも名残惜しく、それがゆえにまたいつしかNSXが復活するではないかという、希望的観測が根強く残るというのも頷けるところだ。

初代、2代目と、ありとあらゆるNSXをモデル化してきたメイクアップだが、もちろんタイプSもしっかりフォローしている。日本の街中で2代目NSXと遭遇する機会は極めてまれだが、ことタイプSに関しては日本で販売されたのはわずか30台とウルトラレアカーであり、実車の姿形を最上レベルでモデル化したメイクアップのミニカーを通じて確認するのは方法としては悪くないだろう。

メイクアップのモデルカーは実車を熟知した開発スタッフが自らの手で取材、測定、スキャニングをし、それを元に原型を設計し、生産までのフェイズにもっていく家内制手工業的なフォーマットのもとで作られている。モデルカー好きはもちろん、クルマ好きをも魅了するのはそうした部分に理由があるのかもしれない。

そろそろ2代目NSXが恋しくなってきた!? その最終進化形を精密モデルで再確認せよ【モデルカーズ】
(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)
そろそろ2代目NSXが恋しくなってきた!? その最終進化形を精密モデルで再確認せよ【モデルカーズ】
(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)
そろそろ2代目NSXが恋しくなってきた!? その最終進化形を精密モデルで再確認せよ【モデルカーズ】
(画像=『CARSMEET WEB』より 引用)

文・鵜飼誠/提供元・CARSMEET WEB

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