レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』は謎に満ちている。彼女は誰なのか?彼女の謎めいた表情は何を意味しているのか?レオナルドはどのような方法で絵を描いたのか?そして背景は実際の場所なのか?
現在、地質学者で美術史家であるアン・ピゾルッソは、この謎めいた肖像画に関する、少なくとも1つの未解決問題の回答を得ていると言うのだ。それはずばり”背景”だ。
ロイターのマッテオ・ネグリによると、彼女は絵画の背景がイタリア北部ロンバルディア州の小さな町レッコを表していると主張しているという。これは、パリのルーブル美術館に展示されている絵画の岩の構成やその他の特徴を研究した末に達した結論であるというのだ。
作品に描かれている水域は、レッコのすぐ南にあるアッダ川によって形成されたガルラテ湖だ、と彼女は言う。それによると、座っているモナリザの左肩のすぐ上に描かれている橋は、14世紀のアッツォーネ・ヴィスコンティとのこと。しかも、モナリザの左肩の岩層はレッコの石灰岩層と一致しているというのである。ピゾルッソは、今月レッコで開かれた地質学会議でこの仮説を発表した。
彼女のウェブサイトのプロフィールによると、地質学者としてのキャリアをスタートさせ、石油掘削や環境浄化プロジェクトに携わったという。しかし、その後イタリアのルネサンスに魅了されるようになり、ルネサンス研究で修士号を取得するまでに至ったという。以来、彼女は2つのベクトルの情熱を融合させ、この時代の芸術作品にユニークな地質学的視点をもたらしている。
背景のこれまでの説は、主に絵の中の橋と道路に焦点が当てられていた。モナリザはイタリア北部の町ボッビオかアレッツォ州のどこかで描かれたと主張する学者もいる。昨年夏、イタリアの美術史家シルヴァーノ・ヴィンチェティは、この絵はトスカーナのラテリーナ村にあるポンテ・ロミト橋を描いたものだと主張した。だが、これらの理論はレオナルドの作品の岩の形成を無視している、とピゾルッソは述べる。
「アーチ型の橋はイタリアやヨーロッパの至る所にあり、それらは非常に似ています」と彼女はオブザーバー紙に語った。「橋だけで正確な位置を特定することは不可能です。みんな橋の話をしていて、誰も地質的な話をしていないのです」
レオナルドは1519年に死去したが、その生涯に観察記録や絵、そして図表を記載した多くのノートを残している。ただ、それらのメモの中にはモナリザの位置を明らかにしているものが無いため、現在のところ彼女の説を証明する方法も反証する方法もない。彼女の専門知識がレオナルドのように科学と芸術を組み合わせていることもあってか、支持する学者もいる。
「彼女は正真正銘の科学的知識を持っています。史上最も科学的な芸術家であるレオナルドの思考に気づくということはとても重要です」と、美術品の保護に取り組む非営利団体「ArtWatch U.K.」のディレクター、マイケル・デイリーはオブザーバー紙に語った。
とは言うものの、誰もが彼女の説に納得しているわけではない。オックスフォード大学の著名な美術史家であるマーティン・ケンプは、絵画の背景は実在の場所ではなく想像上の場所であると主張している。
「レオナルドは、現実のものを信じられないほど熱心に見つめながら、それを絵画に作り替えているのです」と、ケンプはCBCラジオで語っている。そして、地質学を使って背景を決定しようとするのは「単なる空想にすぎない」と批判する。
ヴァージニア大学の美術史家フランチェスカ・フィオラーニも同意見で、レオナルドの絵画に描かれた場所は「実際の風景のコピーではなく、彼の個人的な想像上の自然の描写です」と語っている。そして、「そうでないと主張することは、レオナルドの心の動きや絵の描き方を理解していないことを理解していないということです」と彼女は付け加える。
果たして、モナリザの背景の場所が特定される時は来るのだろうか。今後の調査に期待したいところだ。
文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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