群馬県吾妻郡中条町にある大きさおよそ4メートルの巨石。県の文化財にも指定されているこの巨石は、物言う怪石として伝承されており、「さえずり石」「しゃべり石」などと呼ばれ祀られている。産岩、立岩、亀岩など、吾妻七つ岩のうちの一つに数えられている。
時代は鎌倉ごろのこと。親の仇を探して旅をしていたある男が、この石を寝床にして野宿しようとした。すると、どこからともなく声がすることに気付き、またその声がこの石の中から聞こえてくることがわかった。その石の声に耳を澄ませて聞いてみると、なんと自分が長い年月訪ね回っていた敵のことを話しており、しかも親の仇の場所まで喋っていたのだ。神仏のお告げだと確信した男は石の言った通りの地へ向かい、とうとう仇を討つことができたという。
その後も、この石はよく人の言葉を喋っていたため、里の人々は「囀り石」と呼んでおそれ、祀るようになったという。ところが、それから数年後のある時、越後から訪れていた旅人が囀り石のそばを通りかかった際、人の言葉を発する石に驚いて思わず石のかどを斬りつけてしまい、以来その石は何も喋らなくなってしまったという。なお、この時斬り飛んだ石は1.5キロメートル離れた蟻川まで飛んでいき、直径3メートルで中央から2つに割れている「割石」として残り、鹿島明神として祀られているという。
声を発する石や岩の伝承は全国に分布している。泣き声をあげるという「夜泣き石」の伝承は多く、夜通行人に味噌をくれと杓子を突き出したという岡山県の「杓子岩」、命を狙われている者が通りかかった際に声をかけ命を救ったという長野県の「物岩」などが見られる。
また徳島県では、通りがかりの力士が石から「おっぱしょ」と言われおぶったところ、次第に石が重くなっていくことに我慢ができなくなり、放り投げた石が真っ二つに割れとうとう喋らなくなったという「おっぱしょ石」の伝承もある。石が破壊され喋らなくなるというケースは囀り石と共通していると言えるだろう。
攻撃を加えられたために応答することが無くなったというところでは、タヌキなど何者かが喋る石として化けていたということも考えうるところではある。一方で、石や岩は太古より神が降り立ち、石や岩を通して神の声を聞くという儀式が行なわれていたとも言われている。宗教性を強く有していた石や岩の儀式性が次第に忘れられていき、「石が言葉を発する」という部分のみが民間で伝えられていったものが、喋る石・物言う石の伝承なのではないかという説もある。
群馬と言えば、そのほぼ中央に位置する日本有数の名山「赤城山」があり、古墳時代から岩石信仰が盛んであったと言われている。火山活動によって特有の岩石を形成するということも起因してか、「岩神の飛石」や「チャンコロリン石」など群馬県は石の伝承が非常に多いのも特徴である。「囀り石」も、そうした岩石信仰の流れを汲み形成された伝説なのかもしれない。
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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集 部)
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提供元・TOCANA
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