JAL(日本航空)のファーストクラスの個室の写真を見て、「快活CLUBの個室でも味わえるのではないか」との投稿が、X上で話題になっている。もちろん、空の上の移動手段である飛行機の座席と、陸上の建物の中にある空間を、同じ基準で比較するのは意味がないことなのかもしれない。だが、あえて相違点を比較することで見えてくるものがあるのではないだろうか。今回は、元JAL社員で航空経営研究所主席研究員の橋本安男氏に検証してもらった。
話題のきっかけとなったのは、あるXユーザーが9月23日に「JALファーストクラスの写真見てみたけど、快活クラブで味わえる気がしないでもない」とつぶやいたことによる。「元も子もないこと言ってる」と笑い飛ばす向きもあるものの、この投稿は瞬く間に拡散され700万回以上表示されるほど注目を浴びた。また、「窓があって空の景色があれば同じ」など同調する意見も多くあがっている。
9月27日付当サイト記事『100万円超のJALファーストクラス席の造り、快活CLUBと変わらない?』でもJALのファーストクラスと快活CLUBの個室を比較したが、今回は航空経営研究所主席研究員で元桜美林大学客員教授の橋本安男氏に検証してもらった。
「まず、ファーストクラスについて。そもそも、ファーストクラスが個室化され始めたのは、比較的最近で、2017年以降でしょうか。ビジネスクラスではありますが、デルタ航空が2017年秋から運航しているエアバスA350型機に、個室タイプのビジネスクラス『デルタ・ワン』スイートを導入しました。全席通路側のフルフラットベッドシートという特徴に加え、世界初のスライド式ドアを各座席に設置。
それまでのファーストクラスは、幅が広く、足下が広いだけで、高級なサービスがありましたが、外部の視界からはほぼオープンでした。それがシェル化して徐々にプライバシーの度合いが増してきました。そしてドアが付いて個室的になってきましたが、完全密室というわけではありません。
ドアはスライド式引き戸であって、安全上の問題で内側からロックがかかるわけではなく、密室でもありません。ちなみに、エールフランスのファーストクラスは、カーテンで仕切るのみです。ほとんどの航空会社は基本的にパーティション構造で、一般にドアを含め壁の高さは必ずしも視界を完全に遮るほど高くありません。一方、ほぼ天井まで覆われるのが、ルフトハンザドイツ航空(ただし格子戸)とシンガポール航空のファーストクラスで、完全に天井まで覆われるのがエミレーツ航空のB777ファーストクラスです。
“究極のファーストクラス”は、エティハド航空のザ・レシデンス(A380)でしょう。リビングルームとベッドルームが別にあり、真ん中にシャワールーム/トイレがあります」(橋本氏)
日本の航空会社のファーストクラス
「全日本空輸(ANA)は2019年8月2日、B777-300ERで新ファーストクラス「THE SUITE」、ビジネスクラス「THE ROOM」を導入。ドアの高さは、それほど高くなく、客室乗務員(CA)からは目視確認できる程度です。
一方、日本航空(JAL)は2024年1月24日、新たな国際線フラッグシップ機エアバスA350-1000を羽田-ニューヨーク線に就航。ファーストクラスとビジネスクラスはJAL初のドア付き個室タイプとなりました。ファーストクラスは、座席上のオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)をすべてなくし、ビジネスは窓側のみとすることで開放感のある客室に仕上げました。ファーストの各席は高さ約157センチ(62インチ)の壁で仕切られており、ビジネスも約132センチ(52インチ)の壁を設けることで、個室感を高めてリビングのように過ごせます。しかしCAからは視認できる高さです」(同)
【まとめ:移動空間の座席とネットカフェ比較】
・密室度…快活クラブ:ドアに鍵がかかる部屋がある ファーストクラス:安全上ロックなし。CAから視認できるケースが多い。
・美食…ファーストクラス:高級フレンチ、懐石料理 快活クラブ:食堂でラーメン等/室内持ち込み不可(営業許可の関係)
・ホスタピリティ(おもてなし)…ファーストクラスが圧倒的
・エンターテインメント…快活クラブ:PC付き、豊富な漫画/雑誌書庫。ネットも速い ファーストクラス:機内エンターテインメントで最新の映画
・価格…ファーストクラスが圧倒的1000倍以上の高額
・アメニティ…ファーストクラス:航空会社ブランド入り上下ルームウェア、ブルガ リ等高級化粧品/小物、洗面具、タオル、高級ポーチ付き 快活クラブ:タオル、スリッパ等は無料だが、ルームウェア、歯ブラシ等は有料。
・窓の景色…ファーストクラス:3つの窓(JAL、エミレーツ等)、エミレーツでは双 眼鏡も配備 快活クラブ:ほとんどの場合、窓が無い
こうしてみると、陸上のエンタメ施設と飛行機という移動手段の空間というだけでなく、個室そのものにも違いがあることがわかる。飛行機は安全上、完全な密室にすることはできず、プライバシーとしては快活CLUBに分がある。また、ネット環境や自由に閲覧できる漫画、ダーツやビリヤードなどのエンタメ設備(店舗による)という点でも快活CLUBに軍配が上がる。
だが、飛行機にはCAがいることで、手厚いおもてなしを受けられるという点が最大の特長だろう。狭い空間とはいえ、最上級のホテルや旅館に泊まったかのような満足感が得られるわけで、いわばそのサービスに多額の料金を払うといえるだろう。
(文=Business Journal編集部、協力=橋本安男/航空経営研究所主席研究員、元桜美林大学教授)
提供元・Business Journal
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