そこでチームは今回、地球の放射熱が月面に与える影響を調べるため、新型コロナ期間の「ロックダウン」に注目しました。
2019年末に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、翌2020年から世界中でロックダウン(都市封鎖)を展開させるに至りました。
中でも最もロックダウンが厳格に行われたのが2020年4〜5月にかけてです。
この期間は人的活動が世界規模で激減し、温室効果ガスやエアロゾルの排出量も大幅に減少して、地球から宇宙空間へと放出される熱量が下がりました。
つまり、ロックダウンによる地球の放射熱の減少が月面の夜間温度にも影響を及ぼした可能性があるのです。
チームはこの仮説が正しいかどうかを検証してみました。
ロックダウン中に月面温度が8〜10℃も下がっていた!
本調査では、NASA(アメリカ航空宇宙局)の月周回無人衛星「ルナー・リコネサンス・オービター」が収集した月面の温度データが使用されました。
ルナー・リコネサンス・オービターは過去数十年にわたり、月面の平均温度データを記録し続けています。
チームは今回、月面の温度データが収集されている6つの場所に焦点を当てました。
その中には、月面の西側にある「嵐の大洋(Oceanus Procellarum)」と呼ばれるエリアや、月面の北東に位置する「晴れの海(Mare Serenitatis)」、月面の北部にある「雨の海(Mare Imbrium)」といったエリアが含まれています。
6つのスポットは表面積900〜2500平方キロメートルの範囲となっています。
そしてチームは最も厳しいロックダウンが世界規模で行われた2020年4〜5月を境に、その前後3年間の月面温度を分析。