消費者が安くてお得なサービスを追い求め過ぎた結果
では、整備士の労働環境・条件の改善の動きはみられるのか。
「昔に比べると環境の改善はあるように見られます。今でも古い工場は冷暖房がなかったりしますが、多くの整備工場は空調が整っています。労働時間や休日も、表向きは改善されています。しかし実際は、空調の使用が電気代節約のために制限されていたり、請け負った仕事をこなさざるをえないことからサービス残業していたり、結果としてそういった環境下で集中力が途切れ、怪我をしたり病気をしたりなんていうことにもつながります。こうした現実を見ると、離職防止というのには程遠いように思われます。最近でも、クルマが好きだからという理由で整備士を志す若者は少なからずいますが、その多くは夢破れ、異業種へと転職したり、職場を転々と移っているのが実情でしょう。
だからといって、経営側だけに問題があるのかといえば、そうとも言い切れません。整備業界では、『レバーレート』という1時間あたりの基本工賃の基準があり、それにある程度準じて工賃の算出などをしますが、実際の作業はすべてが基準通りにうまくいくとは限りませんし、整備士の技量によって作業時間が変わってきます。同じ内容の仕事でもかかる時間や労力は違うのに、ある程度定められた金額でしか請求できない事情や、情報化社会によって何事も相場が簡単にわかる昨今、少しでも追加費用の話をすると『他店より高い』と言われるので、赤字覚悟で仕事を受けなければいけないことも少なくありません。
消費者意識が高くなり過ぎた、といっても過言ではないでしょう。私たちは少しでも得をして生きていこうとしながら、巡り巡って自分で自分の首を絞めているのかもしれません。実はその象徴がビッグモーター問題であり、消費者にとって都合良く、安くてお得なサービスを追い求め過ぎた結果、無理が生じて狂気的な経営姿勢と営業現場を生み出し、社会問題にまで発展したのではないか、と考えています」(同)
(文=Business Journal編集部、協力=桑野将二郎/自動車ライター)
提供元・Business Journal
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