■犬頭の聖人と旅行者たちの証言
キュノケファロスの存在は広く知られていたようで、キリスト教の聖人クリストフォロス(3世紀ごろ)はキュノケファロスの一族の出身だとされることがある。正教会の伝承によると、クリストフォロスはアフリカ北部出身の獰猛な犬頭の一族出身だが、ローマの捕虜になった後にキリスト教に改宗し、時の皇帝デキウスによって処刑された。そのイコンは犬の頭を持った人物として描かれていた。
また、各地の神話や伝説にも犬頭の人々が登場している。ブリテンのアーサー王伝説もその一つで、王と騎士たちが犬頭の無法者たちを退治する話が残っている。その他にも、アレキサンダー大王の伝説(アレキサンダー・ロマンス)の中にもキュノケファロスが登場しており、このイメージが後の世に大きな影響を与えたとの指摘が存在する。
中世に人気を博した旅行記の中にも、しばしばキュノケファロスが記録されている。13世紀にヴェネツィアから中国まで旅したマルコ・ポーロや、14世紀にモロッコからエジプト、インド、中国まで旅したイブン・バットゥータなどが、その著書の中で犬のような頭をした人々について書いているのだ。マルコ・ポーロによれば、彼らはインド東部のアンダマン諸島に住み、普段は香辛料を育てているというが、その性格は闘犬のように獰猛だという。
その後、キュノケファロスの記録は絶え、今ではフィクションの中に登場するだけとなってしまった。獰猛で勇敢な戦士だったという彼らは、人間との戦いの中で絶滅してしまったとでもいうのだろうか? 現代でも時折目撃される狼男などのUMAは、もしかすると彼らの生き残りなのかもしれない。
提供元・TOCANA
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