『暗い日曜日』は、1933年にハンガリーで発表された楽曲である。ブダペストでレストランのピアノ弾きでありかつ作曲家であるレジュー・シェレシュが作曲、そのレストランオーナーであるラズロ・ヤヴォールが作詞した楽曲であり、また「自殺ソング」あるいは「自殺の聖歌」の通称でも広く知られている。

「自殺ソング」と言われる所以は、その陰鬱な曲調もさることながら、何より歌詞の内容によるところが大きい。その内容は、とある男性と別れた女性がその男性に対する思いを捨てきれずに回想をするも、最後には生きるのがつらくなり自ら命を絶つことを決意するというものであり、まさに「自殺ソング」の名に違わぬものとなっている。

 この曲が発表された当時は第二次世界大戦下、その時代の雰囲気にマッチしたためか、暗い日曜日は大ヒットとなったという。だが、それと並行して、この曲にはとある恐ろしいいわくが囁かれ始めたというのだ。それは、「この曲を聴くと自殺してしまう」というものであった。

 1936年2月、ブダペスト市のとある靴屋主人が死亡した。市警が現場を調査したところ、その主人が書き残したと思われる遺書が発見され、そこには暗い日曜日の一節が引用されていたのだという。遺書において何らかの言葉が引用として使用されていることについてはさほど珍しいケースという訳ではないが、問題はこの時点で既にブダペスト市内では、20人近い人々がこの「暗い日曜日」に関連する形で自殺していたというのである。

 例えば、バーでジプシーバンドがこの曲を演奏していたところ男性2人がその場で拳銃自殺、他には、ある少女が暗い日曜日のレコード盤を抱きながらドナウ川へ入水自殺、などなど。事の重大さに、ブダペストはおろかハンガリー国内において、暗い日曜日は演奏および販売が禁止されてしまう異常事態となってしまった。

 ところが、ハンガリーにおいて禁止がなされたその頃、暗い日曜日は既に世界各地へ輸出されており、そのせいか被害は国外各所にまで波及する結果をもたらしてしまったという。ベルリンでは、若い女性が首吊り自殺をし、その足元に暗い日曜日のレコード盤が置かれていた。ニューヨークでは、ある自殺した女性が「葬儀で暗い日曜日を流して欲しい」とその遺書に書いていた。さらにローマでは、自転車に乗っていた少年が浮浪者の前を通りかかった際にその目の前で止まり、有り金を全てその浮浪者に渡した直後川へ飛び込み死亡してしまったが、その時浮浪者は暗い日曜日を口ずさんでいたという。

 作曲者のシェレシュによると、この曲は彼の元恋人であった女性との出来事がきっかけで生み出されたのだという。シェレシュは、予想に反してこの曲が大ヒットとなったことをかつての恋人であるその女性に連絡したところ、なんとその翌日に女性が遺体となって発見されたというのだ。服毒自殺により亡くなった彼女は遺書を残しており、そこには「暗い日曜日」とだけ記されていたのだという。

世界中を恐怖に陥れた楽曲「暗い日曜日」聴くと自ら命を絶ってしまう伝説は本当なのか?!
(画像=1925年頃のレジュー・シェレシュ By Unknown author,『TOCANA』より 引用)

 これらの出来事が、実際に発生した事例であるかどうかについては、ハッキリ言って定かではない。中には、さすがにできすぎではないかと思えるものもあるのは確かである。しかし、このような都市伝説が世界的に浸透するに至るのに、絶大なインパクトを残したことも確かであると言えるだろう。各国の放送局でも放送禁止となってしまったという逸話すらある。

 一説には、冒頭でも述べた通り発表された時代が時代であるだけに、その陰惨な風潮の中でこの曲が自殺へのトリガーの役割を持ってしまったのではないかとも言われている。少なくとも確かなことは、1968年に作曲者であるシェレシュ自身が投身自殺をしてしまったことだ。

 現在、この楽曲は世界中でカバーされており、日本でも日本語版の翻訳で様々な歌詞が植わっている。なお、この曲を意識したものであるのか、ロックバンド「人間椅子」の「暗い日曜日」という楽曲もあり、その重厚なサウンドと本家に劣らない暗さを持つ曲となっている。

文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

提供元・TOCANA

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