私はこれまで何度も、高市氏の靖国神社参拝の立場に反対してきました。そのため、彼女が総理になることは難しいだろうと書いてきた経緯があります。

決戦投票の前、岸田総理は支持者に対して「高市氏では対中・対韓、そして日米関係が悪化するので、彼女を総理にするべきではない」と強く訴えました。ワシントンにいながらも、日本政府の動向に関する情報は進行形でも入ってきます。私もその話を耳にし、SNSでも同様の見解を何度か共有してきました。

日本の政治的立場を単純に右翼や保守といった枠で捉えるのは難しく、複雑な背景があります。しかし、高市氏が「心の問題」として靖国参拝を推進する姿勢は、国際政治の基本的な理解に欠けていると感じざるを得ません。

もちろん、英霊を偲ぶ気持ちは誰も否定するものではなく、これは内政干渉の対象でもありません。しかし、国際社会の常識や国益、そして個人の信条は常に一致するわけではないのです。

特に問題となるのは、高市氏やその支持者が、世界が靖国参拝をどのように捉えているかを理解していないように見える点です。アジア諸国だけでなく、広く国際社会がこの行為に不快感を抱く中、参拝を強行すれば日本は自己中心的と見なされ、国際的に孤立する可能性があります。

韓国の前政権は混乱していたように見えましたが、現在は友好的な関係を築きつつあります。このような状況で、高市氏が参拝を強行すれば、再び韓国との敵対関係に戻るリスクがあります。

米国も同様に、参拝が日米韓の協力関係を揺るがすことを懸念しています。米国は靖国参拝に直接介入する立場ではありませんが、対中戦略における日米韓の協力が崩れることを恐れているのです。第一次安倍政権時代のように、参拝の強行が日米韓関係を損ない、日本だけでなく米国の国益さえも危うくする事態を避けたいというのが、米国の本音でしょう。

石破氏の政権が長期にわたるかどうかは不明ですが、少なくとも高市氏のように国際情勢を理解していない人物では、日本の安全保障が再び危機に陥る危険性があります。