日銀の植田和男総裁は24日、大阪市で講演し、先行きの金融政策運営について「内外の金融市場の動向やその背後にある海外経済の状況を丁寧に確認する必要がある」と指摘した上で、「そうした時間的な余裕はある」との考えを示した。歴史的な円安進行に歯止めがかかり、「物価上振れリスクは相応に減少している」とし、利上げの判断を急がない姿勢を改めて強調した。

 日銀の7月末の利上げ決定後、米景気の後退懸念もあり、株価と円相場は乱高下した。米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを開始したものの、植田氏は米国経済がソフトランディング(軟着陸)に向かうかは「依然不確実」と説明。金融市場も「引き続き不安定な状況」として、「極めて高い緊張感を持って注視し、経済・物価見通しに及ぼす影響をしっかりと見極めていく」と述べた。

 一方、植田氏は「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、政策金利を引き上げていく」と言及し、利上げ路線を堅持する方針も表明した。 

 講演後の記者会見では、植田氏は年初からの投機筋の円売りを念頭に「短期的なポジションの巻き戻しの動きは一段落した」と評価。米経済動向の見極めには「どれくらいの時間がかかるのか、今の時点では申し上げられない」と話した。

 27日投開票の自民党総裁選で選ばれた新総裁が首相に就く。2%物価目標を定めた政府・日銀による共同声明の次期政権での取り扱いについて、植田氏は「現段階ではノーコメント」と述べるにとどめた。「どういう考えの方が総裁、首相になるとしても政府との密接な意思疎通を図る」と話した。(了)

提供元・Business Journal

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