過去の出来事に関してどういうわけか完全に思い違いをしていたことに気づいてショックを受けたことがあるかもしれないが、それが広く集団的に起きる現象が「マンデラ効果」である。この摩訶不思議なマンデラ効果をどう理解すればよいのか。
■集団的思い違い「マンデラ効果」の謎
人間である限りヒューマンエラーを完全に排除することはできないのだから、記憶違いがあったとしても仕方のないことだ。
その場合、誰かがその間違いを指摘して修正してくれることが望ましいのだが、どういうわけか周囲の人々も同じ記憶違いをしていたなら……。
ある意味では恐ろしく絶望的な状況ともいえるこのマンデラ効果は、南アフリカの元大統領、ネルソン・マンデラ氏が1980年代に獄死したという誤った記憶を多くの人々が共有していたことにちなんで名付けられた。ちなみにマンデラ氏は2013年に95歳で亡くなっている。
ビジュアルでもマンデラ効果の例が数多くある。
たとえばボードゲームのモノポリーの紳士は片眼鏡をしていないこと、ピカチュウの尻尾の先に黒い縞はないことなどが挙げられる。
ニュースメディア「UNILAD」の記事よれば、X(旧Twitter)のマンデラ効果に関するスレッドで、実際に体験した者の書き込みを紹介している。
「幻覚だ。シミュレーションの中にいるに違いない」
「月曜日なのに、こんなレベルで頭が混乱するなんて!」
「どうやら私は別の次元から来たようだ」
「マンデラ効果にはびっくりだ」
あのイーロン・マスクも支持している“シミュレーション仮説”を暗に示すツイートもあるようだが、多くの人々が何かを間違って覚えてしまう原因は正確にはわかっていない。
一説では、脳内の記憶の収蔵スタイルは図書館にも似ており、〝索引〟がつけられて分類されていると考えられ、ある記憶を引き出そうとすると分類上それに密接に繋がった記憶も引き出されて混同してしまうことからきているという。
脳内の“索引”のスタイルは特に同じ文化圏ではかなり似ており、集団レベルでこの〝偽の記憶〟が引き出されて共有されるとすれば確かにマンデラ効果にもなり得るだろう。
また記憶の欠落部分を脳が埋めあわせ、記憶の意味を理解できるようにする「作話(confabulation)」が集団レベルで起きる可能性もあるのかもしれない。
ほかにも何らかのニュースの直後に起きた印象的な出来事で誤認が誘発されるケースや、認識を歪めそうな暗示があるケースなど、マンデラ効果に繋がり得る条件が偶然に揃ってしまうことがありそうだ。
理由が何であれ、マンデラ効果は我々の周囲の世界に対する認識がいかに柔軟であるかを思い知らされる事例だ。記憶は我々が思っているほど信頼に足るものではなく、さらには時間の経過と共に記憶が変化する可能性もある。
“うろ覚え”のままで構わないことも少なくはないのだろうが、それが何らかの結果や判断を生み出すものであるのならば、曖昧な記憶は面倒くさがらずにさかのぼって確認することが求められているのだろう。そしてネット時代であるからこそ、誤って記憶しそうな事象をネット上でどんどん共有していきたいものである。
参考:「UNILAD」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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