もともと彼女には、あざが出来やすく、血管の破裂を引き起こす「エーラス-ダンロス症候群」という難病があったが、その病気と「外国語様アクセント症候群」の関連はわかっていない。ミッシェルは自分の昔のビデオを見て、こう言う。
「私が昔は『普通に』話していたのを見ると、とても悲しいです。今では自分が全く別人になったような気がします」(ミシェル・マイヤーズさん)
「外国語様アクセント症候群」が最初に公式に記録されたのは、1941年、第二次世界大戦中、ドイツがノルウェーを占領していた時のことである。爆撃を受けたノルウェー人女性のアストリッド・Lの脳に、爆弾の破片が突き刺さってしまった。彼女が意識を回復した時、彼女のノルウェー語はなぜか敵のアクセントであるドイツなまりになっていたのだ。
「外国語様アクセント症候群」に関する初の詳細な論文を書いた神経学者のゲオルク・ハーマン・モナード=クローン博士は「彼女は、自分が買い物に行くと店員に敵のドイツ人と思われてしまい、何も売ってくれないと不満を訴えていた」と述べている。
外国語様アクセント症候群を研究している米テキサス大学によれば、この症候群は世界で数百件記録されているとのこと。中には、日本語アクセントの英語から韓国語アクセントの英語へ、イギリスアクセントの英語からフランス語アクセントの英語へ、アメリカ英語からイギリスアクセントの英語へ、そしてスペイン語アクセントの英語からハンガリー語アクセントの英語への変化が記録されている。
この症例の中には、統合失調症等の精神医学的な疾患によって引き起こされた可能性のあるケースもあるという。しかし精神疾患のみで、外国語様アクセント症候群を引き起こす要因として十分であるかどうかは不明である。
外国語様アクセント症候群と統合失調症の症状を併せ持つ34歳の女性のケースでは、新しいアクセントは精神病症状が持続している間は継続し、その症状が沈静化した後に消滅したという。