アレクサンドリア症候群とは、遺伝子の突然変異によってもたらされる疾患の一種であるという。その症状から、並外れた資質を持つ人間、いわば超人化させる疾患とも言われている。

 アレクサンドリア症候群の起源は、古代エジプトにまで遡るという。それによると、古代エジプトには青白い肌に紫色の目を持っていた「霊人」と呼ばれる人々が存在し、やがて姿を消していったというのだ。

都市伝説的奇病?紫色の目を持って生まれ超人化する「アレクサンドリア症候群」とは
(画像=画像は「pxhere.com」より、『TOCANA』より 引用)

 この疾患が医学的に記録されたものとして知られるのは1329年のこと。アレクサンドリア・アウグスティヌスという紫色の目を持って生まれた少女がおり、母親は娘が魔女に呪文をかけられているのではないかと考え、村の司祭の元へ連れて行った。司祭によって少女の症状は、その名前を取って「アレクサンドリア症候群」と名付けられた。その後、アレクサンドリアは健康に成長していき、同じ紫色の目を持つ子供を産み、100歳を超えるほどに長生きをしたのだという。

 アレクサンドリア症候群の特徴は、その最大の特徴である紫色の目のほかにも次のようなものがある。日光にさらされても日焼けすることがない透き通った肌を持ち、顔と頭以外の部分の体毛が一切生えず、髪は濃い褐色になる。女性のみに起こる変異であると言われ、月経が無いにも関わらず妊娠出産が可能であるという。また、きわめて長命になるとも言われており、50歳ごろになると老化が一時的に止まり、数十年すると老化のサイクルが戻るそうだ。このアレクサンドリア症候群は、1960年代になってその症状を引き起こす遺伝子が発見されたと言われている。

 さて、ここまで述べたこの奇妙な「アレクサンドリア症候群」であるが、実は公的にそのような疾患が認められているわけではない。もっと言えば、アレクサンドリア症候群そのものが都市伝説として広まった「創作」であると言われているのだ。

 この疾患が広まったのは1990年代後半、とあるウェブサイトによって書かれた記事であると言われている。かつて、1990年代にアメリカで放送されていたアニメ『Beavis and Butthead』(ビーバス・アンド・バットヘッド)の登場人物ダリア・モーゲンドーファーを主人公としたスピンオフ作品『Daria』のファンサイトが存在していた。

 そこでキャメロン・オーベルノンという人物が、作中の一部キャラクターが紫色の目であることを説明する際、「カラーコンタクトを使用しているのではなく、アレクサンドリア症候群なのだ」と主張したことが始まりであったと言われている。前述した少女の神話も、アレクサンドリア症候群のバックボーンとして創作されたものであるという。

 当のオーベルノンは、2011年になっていまだこの疾患について議論がなされていることに気付き、「すべてフェイクです」と声を上げたものの、現在では自身がアレクサンドリア症候群であると主張する人々の投稿や書き込みがSNS上で散見されるなど、かなりの影響力を持った概念と化してしまったようである。

 その存在の証明として、紫色の目を持っていたことで知られていたイギリスの女優エリザベス・テイラーが事例としてあげられることも少なくはない。発端が、目の色についての言及だったということから、目の色を個性として非常に重要視するという欧米人の価値観、いわば一種の憧れがこの神話を形成していったのではないだろうか。

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文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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提供元・TOCANA

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