走行中に忽然と姿を消した列車があるという――。車両と乗客はいったいどこへ行ってしまったというのか。それとは逆に、突然線路上に出現した車両もまた目撃されているというから驚きだ。
■トンネルで忽然と消えた豪華列車
イタリア・ローマの駅で人々の称賛と羨望のまなざしを浴びる豪華車両がセレブたちを乗せ、奏でられた盛大なファンファーレに送られる賑やかな出発式を経て、記念すべき初運行をスタートさせたのだが――。
1911年6月14日にイタリアの鉄道会社「ザネッティ(Zanetti )」が新たに導入した高級感あふれる豪華車両は、その運行を記念して招待した100人のゲストを乗せ、ロンバルディアの山々を通過する風光明媚なルートを旅するべくローマを出発した。
3両編成の車両には豪勢な食事のサービスもあり、ゴージャスで快適な鉄道旅行を約束する未来を先取りした富裕層向けのレジャーであったはずなのだが……。
列車は無事に出発し、裕福な乗客全員がラグジュアリーな旅の体験にとても満足していた頃、豪華列車は当時ヨーロッパ最長のトンネルに差しかかった。
ニュースには格好の題材であったこの豪華列車の初運行だったこともあり、多くの記者たちがこのトンネルの出口付近でシャッターチャンスを狙うべく集まっていた。
しかし、集まった人々は待ちぼうけを食わされることになる。予定の時刻を過ぎてもトンネルの中から豪華列車が姿を現すことはなかったのだ。
何かがおかしいことに気づいた関係者は、トンネルの中で車両が故障して停まったのだと考えた。急遽対策本部が作られ、編成された現場検証チームが全長800メートルのトンネルの中に足を踏み入れた。しかしチームメンバー自身も驚いたことに、彼らは何事もなく無事にトンネルの逆側に出る羽目になった。車両がなかっただけでなく、車両が通過した痕跡もまったく見つけることができなかったのだ。いったい何が起こったのか。
捜索の範囲はトンネルだけでなく線路の付近一帯にも広げられ、捜索チームは線路の近くでフラフラした足取りでさまよっていた2人を発見して保護した。話を聞くと消えた豪華列車の乗客であった。
2人の乗客はいくつかの奇妙な出来事を体験した後、パニック的な反応で列車から飛び降りたと説明した。彼らによると、列車がトンネルに入る直前に、大きく低い“ブーン”という音が聞こえ、あたりに“乳白色の霧”が立ち込めたという。そしてトンネルの暗闇が列車を“飲み込んだ”というのである。
明らかな異常事態にそれまで旅を楽しんでいた乗客たちはパニックに陥り、車内は騒然となったそうだ。混乱する車内に動揺したこの2人は思わず列車から飛び降りたというのである。この2人の話が真実だとすれば、2人が飛び降りた後、豪華車両は乗客共々忽然と姿を消したことになる。列車はいったいどこへ行ったというのか。