研究によれば、日常生活で実際にニセ情報に出くわす人はほとんどいない。にも関わらず、「フェイクニュース」の害に対する懸念は近年高まっているという。米議会襲撃事件や、「COVID-19」パンデミックの際のワクチン嫌疑、ウクライナ戦争など、注目を集めた出来事がこうした懸念を煽っている。

 同時に、ファクトチェックの取り組みも活発化している。BBCやCNNなどの大手ニュース・プラットフォームは、ファクトチェックを通常のサービスに組み込んでいる。また、メディア・リテラシー・キャンペーンも盛んで、何が真実で何が嘘かを理解する方法を一般大衆に伝えるためのプログラムが組まれている。

 ところが、今回の新たな研究では、こうした取り組みが意図せぬパラドックスを引き起こしていることが明らかになった。誤った情報と戦うために使われたツールそのものが、信頼できる情報源を含んだあらゆるニュースに対する不信感を助長しているのだ。

 研究者たちは、米国、ポーランド、香港で6,127人の参加者を対象に「ファクトチェック」「メディアリテラシーの取り組み」「専門的な報道」という、現在誤報対策として使われている3つ修正戦略の有効性を検証するためのオンライン調査実験を行ない、それらを3つの代替戦略と比較した。

 再設計された戦略の狙いは、情報に対して批判的でありながらも過度に懐疑的にならないよう促進することである。例えば、再設計された戦略の1つは、ニュースが真実か虚偽かに焦点を当てるのではなく、ニュース報道における政治的バイアスを理解することに重点を置いた。

信頼と懐疑のパラドックス:フェイクニュース対策が生む意外な結果
(画像=画像はUnsplashのNijwam Swargiaryによる,『TOCANA』より 引用)

 この研究によって、神話を否定するために使われた従来のツールや代替戦略が、正当で合理的な情報に対してさえも、より広範な疑念を一般大衆に抱かせてしまうことが明らかになった。再設計された戦略は、事実と虚構を区別する一般大衆の能力を向上させるという点では、従来の戦術を大きく上回ることはなかった。

「フェイクニュースに関する言説は、誤った情報に対する懐疑心を高めるだけでなく、民主主義が機能する上で重要な役割を果たす信頼できるニュースソースへの信頼を損ないます」と筆頭著者のエマ・ホーズは言う。

 ホーズによれば、誤った認識を減らすことで得られる可能性のある利益と、懐疑心の高まりがもたらすより広範な影響を慎重に比較検討する必要があるという。

「多くの西側民主主義国家では特にそうで、信頼できる事実に基づいたニュースは、幸いにも誤報よりもはるかに一般的です」と彼女は言う。

 そのため、ホーズと同僚研究者たちは、誤報に対する現在のアプローチを深く見直し、ニュアンスの異なる戦略を開発する必要性を訴えている。

「進むべき道は、批判的な目で事実を見極めるよう教育をすることですが、そうでなければ信頼できる情報や情報源を完全に否定するようにはさせないことです」

【参考記事】Futurity

【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】

文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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提供元・TOCANA

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