顔の復元に成功!水生環境にも適応していた

今回の化石は2019年に、南オーストラリア州の内陸部にあるカラボナ湖(Lake Callabonna)の乾燥した湖底から発見されました。

カラボナ湖は1913年にG. ニュートニの頭蓋骨が見つかった場所であり、チームはここで発掘調査をしていたのです。

そこで見つかったのがこちらの頭蓋骨でした。

新発見されたほぼ完全な頭蓋骨
新発見されたほぼ完全な頭蓋骨 / Credit: Flinders University – Giant skull of Australian megafauna bird reveals a prehistoric ‘giga-goose’(2024)

この頭蓋骨はクチバシの上下だけでなく、脳頭蓋(脳を納めていたスペース)、耳や舌の骨に至るまでを完璧に残していたのです。

研究者によると、G. ニュートニのクチバシは現代のオウムのように厚みがあって大きいものの、全体的なフォルムはカモ目に属する「カササギガン(学名:Anseranas semipalmata)」によく似ているといいます。

こちらが頭蓋骨を復元図と、各パーツを分解した図解です。

頭蓋骨の復元図
頭蓋骨の復元図 / Credit: Flinders University – Giant skull of Australian megafauna bird reveals a prehistoric ‘giga-goose’(2024)

さらにチームは頭蓋骨のスキャニングを行い、3次元的に復元しました。

これにより、他の生きている鳥類の頭蓋骨との比較が可能になり、G. ニュートニの頭部にどのような筋肉や皮膚の付き方がしてたか、正確に推定することに成功しています。

そうして現代に蘇ったG. ニュートニの顔がこちらです。

確かに、顔から真っ直ぐにすぼんでいくクチバシはアヒルやガチョウなどの水鳥によく似ていますね。

G. ニュートニのありし日の顔がこちら
G. ニュートニのありし日の顔がこちら / Credit: Flinders University – Giant skull of Australian megafauna bird reveals a prehistoric ‘giga-goose’(2024)

加えて、頭蓋骨の構造から彼らが半水棲生活に適応していたこともわかりました。

例えば、彼らの内耳の骨は水中に潜ったときに、水が耳に流れ込まないような形になっていたのです。

またクチバシの構造も同じく、水が喉に流れ込まないよう保護する仕組みになっていました。

それからG. ニュートニのクチバシは今日のアヒルやガチョウと同じように、水中で餌を探したり、水生植物をつかんで引き抜くのが得意だったと見られます。

これまでの研究で、G. ニュートニは地上を自由に歩き回れたことが示されていますが、今回の知見から水生環境にも適応した”水陸両用の鳥”だったことが支持されました。

もしG. ニュートニが今日も生きていれば、かなりド迫力なインパクトを私たちに与えてくれたでしょう。

チームは今後、G. ニュートニが絶滅した原因について引き続き調査していく予定です。

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参考文献

Giant ‘Giga-Goose’ Once Thundered Across Prehistoric Australia

Giant skull of Australian megafauna bird reveals a prehistoric ‘giga-goose’

元論文

Skull morphology of the enigmatic Genyornis newtoni Stirling and Zeitz, 1896 (Aves, Dromornithidae), with implications for functional morphology, ecology, and evolution in the context of Galloanserae

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。