彼のこの180度転換した姿勢には筆者は驚かない。彼はこれまでも常にこれを繰り返し来た常習犯であるからだ。
また今年6月には中国のWang Wentao商業相がスペインを訪問してEU内で中国の為に圧力をかけて欲しいと依頼した。イタリアが中国離れをした現在、中国はスペインが地中海諸国の中でのEUへの玄関と見做すようになっているのだ。
サンチェス首相の姿勢の変化の背後にあるものサンチェス氏のこの変化の理由というのは明白だ。仮に高関税を適用するようになると、EUから豚肉の中国への輸出でNo.1のスペインがその影響を受けて中国からの輸入量が減される可能性があるからである。更に、サンチェス氏は中国からEVのMG社のスペイン進出を誘う意向もある。チェリー社は今年4月にバルセロナの日産の工場跡地に進出することが決まった。
1979年に日産がバルセロナで日本車の生産を開始した。それから30年余りが経過した今、日本に代わって中国がその跡地を利用して進出する。ここでも日本が中国に代わられる。皮肉な時代の趨勢である。
しかし、中国は南米やアフリカに生産工場を建設しても、中国から労働者を連れて来る傾向がある。ヨーロッパでそのようなことをすることは許されないであろうと筆者は想像するが、中国企業がスペイン人労働者を雇っての経営は容易ではないと考えている。
スペイン以外でもベルギーやハンガリーにも中国車が現地生産されるようになる。それを基盤にして、中国はEU内でEV市場を占有する可能性があることも警戒する必要がある。何しろ、ソーラーパネルではEUのメーカーは中国の襲来の前に完全に生産市場を失ったという二の舞を踏む事態になるかもしれないからだ。
10月末に、EUは高関税の適用について最終の決定を下すことになっている。