「社長になる」が目的ではダメ
学生に教えている起業の本質
芳恵 学生さんには起業をお勧めしてるんですか?
得上 うーん、起業も「目的」になるとダメで、「手段」でなければならないですね。何のために起業するんですかっていうとき、志というような美しいものではなくて、何がしたいのかっていう、もっと欲望みたいなものでもよいから、あれば起業すればいいですし、そのための術は教えます。だけど、目的化しちゃいけないよな、と。目的化するとそこで終わっちゃいますから。それじゃその会社は続かないよ、と。起業して社長になりたい、って言ったって、それは作業でしかないんですよね。マイナンバーカードでポチポチポチってやれば15分でできちゃうんで。わざわざ会社にしてまで何をしたいの、っていうところが大事かなあと。
芳恵 今向き合っている学生さんたちは、やりたいこことが明確にあるのですか?
得上 彼らには、やりたいことしかないんです。それよりも、会社をつくることに対してのハードルのほうが高くて、例えばヒップホップが好きだからそれを広めていく会社をつくりたい、といってもつくり方がわからない、つくったところでそこから先はどうしたらいいかわからない、とか。そういうことに関しては、事業計画っていうやつが必要でね、ということは教えています。
芳恵 お金の集め方とかも必要ですものね。
得上 そうですね。これは教える先生にもよりますが、自分は売却派なので(笑)。立ち上げた会社を長く続けるのも良いし、潰すのも良いし、売却するのも良いですし…。そんなに重く考えるな、と。起業そのものは事務手続きにすぎないよ、と言っています。
芳恵 ところで、起業を数多く経験されていて、これまでに大失敗というのはなかったのでしょうか。
得上 まあ、あるとすれば…、Mining Brownieを売却してしまったことですかね。
芳恵 えっ?!
得上 売らなければ、今頃は花開いていただろうなあと…。
芳恵 それは、いったいどういうことでしょう?
(つづく)
時間も人もまたぐ宝箱
得上氏の思い入れは本棚に。プログラミングや経営に関するものだけでなく、盆栽や音楽、色彩検定に関する書籍も。思い出の保管庫としているだけでなく、これまでの読書は時間や人をまたいで活用できるという。子どもの頃は考古学にも憧れた。昔から知識欲が強かったと自ら語る得上氏の歴史そのものでもある。
心にく人生の匠たち
「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。
「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。
奥田喜久男(週刊BCN 創刊編集長)
<1000分の第356回(上)>
※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。
提供元・BCN+R
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