人が死ぬ時、一体何が起こるのか? 誰もが抱くこの根源的な疑問に、新たな光を当てる研究結果が発表された。ミシガン大学の神経学教授であるジモ・ボルジギン氏は、人間の脳が心臓停止後も活動を続けることを示唆する研究結果を発表し、「これは氷山の一角に過ぎない」と述べている。
ボルジギン氏は以前から、臨死体験や死後の世界に関する人々の証言に興味を抱いていた。しかし、体外離脱やあの世との遭遇といった神秘的な体験談よりも、人間の脳内で実際に何が起こっているのかという科学的な側面に興味を持っていたという。
ネズミの実験からヒトの臨死体験へ
2013年、ボルジギン氏は、ラットの心臓が停止し、脳への酸素供給が途絶えた後も、高レベルの脳波が検出されることを発見した。この発見は、臨死体験で報告される奇妙な現象が、脳の活動の急増によって引き起こされている可能性を示唆している。
そして、ボルジギン氏は、この発見をさらに深く探求するため、人間の脳波の分析を開始した。2014年、ミシガン大学神経集中治療室で、脳の重度の腫脹により深い昏睡状態に陥った24歳の妊婦が、家族によって生命維持装置を外されることになった。この時、彼女の脳に奇妙な変化が起きたのだ。
脳波の「ホットゾーン」が活性化 酸素供給が停止され、呼吸チューブが取り外されると、患者の脳は活発に活動し始めた。生命維持装置が作動している間はほぼ沈黙していた脳の領域が、ガンマ波と呼ばれる高周波の電気信号で満ち溢れたのだ。ガンマ波は記憶の検索や夢と関連付けられる脳波である。
さらに、意識の「ホットゾーン」と考えられている脳の領域も、ガンマ波によって活性化していた。この領域での信号は6分以上も検出され、酸素供給が停止されてから約2分間は、脳波の「強烈な同期」が見られた。
これらの発見から、ボルジギン氏は、患者が「臨死体験」を経験した可能性を示唆している。彼女は、「死の瞬間に脳の機能が停止するという従来の考えは誤りである」と主張し、「脳は、私たちが考えている以上に回復力があり、心臓も同様である」と述べている。
死の瞬間に何が起こるのか、その全貌の解明にはまだ時間がかかるだろう。しかし、ボルジギン氏の研究は、死の過程における脳の活動に新たな光を当て、生命の神秘を解き明かすための重要な一歩と言えるかもしれない。
文=深森慎太郎
提供元・TOCANA
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