世界各地においてその土地ならではの風土や特色があるものだが、スイスのゾロトゥルンという街は中でも一風変わっている。
首都ベルンとバーゼルの間、ジュラ山麓とアーレ河畔に位置し、中世の街並みが色濃く残る歴史的な街であるが、一見すると他のヨーロッパ都市とあまり違いがないようにも見える。ただ一つ、“11” の数に囚われていることを除いては……。
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■“11”にとり憑かれた街
ひとたび意識してゾロトゥルンの街を眺め、数えたり、ちょっと調べてみると、教会や礼拝堂、噴水、塔など、さまざまな建造物が11尽くしであることに気づく。
道行く人々がぱっと見上げて時間を確認する投資銀行の壁にある大時計は、12の部分が欠けており、11までの表示しかない。
街を代表する歴史的建造物である「聖ウルズス聖堂」は建設に11年がかけられ、11個の祭壇、11個の鐘、11個のドア、聖堂正面の階段は11段で区切られており、3つに分かれている聖堂内部の天井高はそれぞれが11メートルという徹底ぶりである。
街の歴史をひもとくと2千年前のローマ時代までさかのぼるが、11の数に関わることになったのは中世からのようだ。ユダヤ人街に今も残る、当時鍛冶屋のギルド(同業者組合)で使用されていた建物がどうやらその発祥らしいという。
1252年にギルドが町議会で11名のメンバーを選出し、1481年にスイス連邦の州として11番目に加盟、やがて16世紀には11の保護領を抱えることとなっていった。