夢を自由に操るという考えは、まるでSF映画の世界の話に聞こえるかもしれない。しかし、この不思議な能力は現実に存在し、約20%の人々が夢の中の世界を冒険できるという。映画『インセプション』でも描かれた「明晰夢」は、現実世界と夢の世界を結びつける有用な手段となり得るかもしれない。科学者たちは、明晰夢の潜在能力を活用し、睡眠中に電灯をつけたり、仮想の車を運転するなどのタスクを実行できるようにすることを目指している。

明晰夢とは?

 簡単に言えば、明晰夢とは自分が夢を見ていることに気づいている状態の夢である。この状態では、睡眠中に「意識が高まった」状態を経験し、夢の中で起こる出来事を自分の意志で操ることが可能だ。明晰夢は悪夢を追い払ったり、トラウマを解消したり、あるいは単に楽しい冒険やサイケデリックな体験を楽しむことができる。また、研究によれば、明晰夢を見ている人々は、睡眠中に現実世界とリアルタイムでコミュニケーションを取ることができるという。

 通常の夢とは異なり、明晰夢では夢を見ている本人が観察者ではなく、夢の内容をコントロールできる。そして、明晰夢の大部分は、睡眠の最も深い段階である「レム睡眠」中に起こる。レム睡眠は、眠りについて約90分後に発生し、脳が非常に活発な状態にあるため、最も鮮明な夢が生じる。明晰夢を体験したことで知られる人物には、ミュージシャンのビリー・アイリッシュや映画監督のクリストファー・ノーラン、物理学者のリチャード・ファインマン、DJのリチャード・D・ジェームス(Aphex Twin)などがいる。

明晰夢を体験するための方法  2017年にオーストラリアで行われた研究では、明晰夢を体験する可能性を高めるための3つの方法が特定された。それは「現実テスト」、「ベッドに戻るために目を覚ます」、そして「明晰夢の記憶誘導」である。

「現実テスト」は、目覚めている間に何度も周囲の環境をチェックして、自分が夢を見ているかどうかを確認するというもので、これによって夢の中でも同じ質問を自分に問いかける習慣が身につく。次に「ベッドに戻るために目を覚ます」は、5時間の睡眠後に一度目を覚まし、10分から1時間ほど起きた後に再び眠るという方法だ。これにより、脳の警戒状態が高まり、夢の中でのコントロール能力が向上する。そして「明晰夢の記憶誘導(MILD)」は、5時間の睡眠後に目を覚まし、「次に夢を見たとき、自分が夢を見ていることを覚えている」と自分に繰り返し言い聞かせるというものだ。この言葉を唱えながら、自分が明晰夢を見ている状況を想像することで、夢と現実の境界を曖昧にする効果があるという。

夢を操る奇妙な能力「明晰夢」を見るための3つの方法
(画像=Leandro De CarvalhoによるPixabayからの画像,『TOCANA』より 引用)