バナナの絶滅は近いのか――。70年前、バナナの一部品種が絶滅した。そして今、バナナに2度目の絶滅の危機が迫っているという。
■バナナを絶滅させた「パナマ病」の再来なのか?
1950年代に中米で大流行した「パナマ病」によって輸出バナナの主流であったグロスミッシェル種が同地域で一度全滅している。
しかたなく生産業者はキャベンディッシュ種のバナナに鞍替えして栽培を再開し今日に到っているのだが、最近になって「Foc tropical race 4(Foc TR4)」というキャベンディッシュ種のバナナを枯らす病原体が増えはじめ、パナマ病の再来になるのではないかと危惧されている。
今月に「Nature Microbiology」に掲載された研究によれば、Foc TR4はインドネシアとマレーシアで発生したとみられ、1990年代に世界で徐々に広がり、その後、世界最大のキャベンディッシュ種の輸出地域であるコロンビア(2019年)やペルー(2021年)を含む広範囲に流行が見られるようになった。
「したがって、Foc TR4の侵入は世界のバナナ貿易とこれらの地域に住む人々の食糧安全保障の両方に大きな脅威をもたらし、発展途上国の貧困を悪化させ、世界の飢餓を深刻化させる食糧不足を引き起こす可能性があります」と研究論文は言及している。
スーパーの棚からバナナが消える日は近いのか。
研究チームによれば希望は残されているという。
研究によれば、Foc TR4は1950年代にバナナを枯らしたパナマ病の菌とは進化的に異なることが判明し、その毒性に関連する遺伝子もいくつか特定できたことで、蔓延を抑えるための潜在的な治療法や対応策への扉が開かれたということだ。
Foc TR4のゲノムには、一酸化窒素の生成に関連するいくつかの補助遺伝子が含まれており、Foc TR4から放出された一酸化窒素がキャベンディッシュ種の免疫システムを無力化し、病原菌の感染を促すという。一方でTR4はは一酸化窒素を解毒する化学物質の生産を増やすことで自らを守っているといるのだ。
研究チームはFoc TR4の一酸化窒素の生産を制御する2つの遺伝子を特定し、これを除去することで菌の毒性が大幅に低下することを突き止めたという。このほかにもFoc TR4の蔓延を緩和、あるいは制御するための多くの選択肢がリストアップできたということだ。
そしてバナナの絶滅に立ち向かうための鍵を握っているのは我々消費者であるという。
スーパーに並ぶ安価なキャベンディッシュ種をついつい手に取ってしまうのは人情というものでもあるが、何回かに1度は別の品種のバナナを味わってみることで、バナナの多様性を高めることができる。
たとえば中米では絶滅したグロスミッシェル種のバナナは2016年頃から国産のものが流通しはじめている。
こうして消費者が偏らない選択をすることで、農産物の多様性を維持し、メジャーな品種に問題が起きた場合でもスーパーの棚からバナナが消える事態にはならなくなるのだ。農産物の多様性は我々消費者一人一人の選択にも委ねられていることは間違いない。
参考:「IFLScience」、「Science Alert」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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