ロシアはウクライナ侵攻の一環として、南ウクライナのザポリージャ近郊にあるヨーロッパ最大の原子力発電所を占領している。この発電所には6基の原子炉があり、合計出力は6ギガワットに達するが、安全性を考慮して完全に停止している。発電所周辺では、度々砲撃やドローン攻撃が確認されている。ウクライナ側による数回の奪還試みも失敗している
IAEAの8月17日の「ウクライナ報告」によると、サポリージャ原発(ZNPP)の原子力安全状況は、無人機による攻撃で発電所敷地の周囲の道路が被弾したことを受けて悪化している。IAEAのグロッシ事務局長によると、「IAEAのサポリージャ支援・援助ミッション(ISAMZ)チームは、無人機が運んだ爆発物が発電所の保護区域のすぐ外で爆発したとZNPPから報告を受け取った」という。爆発地点は、重要な冷却水スプリンクラー池の近くで、発電所に電力を供給する唯一の残存750キロボルト(㎸)送電線であるドニプロフスカ送電線から約100メートルの場所だったという。
ロシアが冬を前に原子力施設へのミサイル攻撃を計画していることに対し、ウクライナのアンドリー・スィビハ外相はX(旧ツイッター)に「原子力発電所や、原子力の安全運転に重要な変電所の配電施設への攻撃計画だ」と書き、原発周辺での戦闘行為は世界的な影響を及ぼす可能性があると警告している。
ウクライナ側の発表によれば、今年3月以降、発電容量が9ギガワット以上の発電所が損傷または破壊された。このため、ウクライナ国内では度々、数時間にわたる停電が発生している。ウクライナで現存操業中の3つの原子力発電所の合計出力は約7.8ギガワットだ。
IAEAのグロッシ事務局長は16日、年次総会の冒頭演説で「ウクライナの原子力発電所に安定した電力供給を提供するために不可欠な電力変電所の監視に力を注いでいる。原子力の安全を維持するために非常に重要だからだ」と説明している。