International Crisis Groupという紛争分析の業界では世界で最も信頼されているシンクタンクの一つが、9月末の第79回国連総会(国連創設79年目の会期)の開催にあわせて、「国連が対応しなければならない10の課題」という論説を出した。最も深刻な問題である第1番目の課題として、ガザ危機があげられた。スーダン、ミャンマーの危機が続いた。

Ten Challenges for the UN in 2024-2025

非常に特徴的なことに、ウクライナ情勢は、国連が対応すべき課題から外された。ガザ危機と並んで、あるいはそれ以上に、安全保障理事会を分断している問題だ。国連が取り組まなくていい問題として扱われるのは、奇異であるようにも感じる。

しかし、実際のところ、ロシア・ウクライナ戦争が国連安全保障理事会や総会で議論される機会は少なくなっており、国連が調停に向けた努力をする機運も乏しいように見える。

International Crisis Groupは、この点について、但し書きのような説明を付した。それによれば、国連がトルコとともに調停に入って達成した「黒海穀物イニシアチブ」が破綻した後、国連が果たせる役割はなくなってしまった、とのことである。

もちろん将来にわたり永遠に国連には何もできない、と断定できるわけではない。しかし安全保障理事会で孤立しがちなロシアは、拒否権発動を繰り返す。ウクライナも、スイスで開催した「平和サミット」において国連に何も目に見えた役割を与えなかったように、国連には何も期待していないようだ。

加盟国193カ国が加入している国連憲章体制において、「国際の平和と安全の維持」(憲章1条1項で明記されている目的)に関して国連組織に与えられている特別な役割を考えると、これは非常に残念な事態である。あるいはブリュッセルに本部事務所を置くInternational Crisis Groupの「二重基準」を示す事態かもしれない(他の地域での紛争に関しては国連が介入して果たすべき役割を説く一方で、欧州での紛争では国連の介入を拒絶する態度をとっているかのように見える)。