事前にわかっているのは「改革の全面的な深化」と、「中国式現代化の推進」が議題となっています。中国式現代化は中国独自の経済モデルの話で不動産に代わる新たなビジネスモデルの構築が内包されるだろうと予想されています。しかし、習氏はかつて経済発展の芽となる産業を自ら次々と摘み取ってしまった上に海外からの厳しい規制の枠で中国企業に自由度が少なく、発展の余地が限られてしまっています。
鉄道建設を中心としたインフラ整備など国家資本主義が機能しているように見えた時代がもありましたが、結局ひずみが大きく、その修正に時間を要しているというのが私の見方です。一方、失業率が高止まりし、仕事が十分にない中でロボットや機械化を更に推し進め、職にありつけない状態が進んでいます。例えば国家主導でドローンビジネスを進化させており、農業などの作業効率性は大きな改善がなされる一方、労働力を吸収できるところが無くなるという自己矛盾を起こしてしまいました。
自由型経済の場合、民間主導で新たなビジネスが次々と生まれ、資本移動と新たなる資本投下がなされます。ところが、国家主導の場合、誰が責任を取るのか不明瞭なまま、国家の大方針の下、大規模な資本投下が行われるわけです。これが常に正しいのであればよいし、バランスが取れたものであればなおよいのですが、中国型経営にはアクセルばかりでブレーキがない暴走機関車のようなところがあり、それが歯止めなき膨張を繰り広げる問題がしばしば起きているわけです。
鉄道建設も2023年だけでも2700㌔が新たに開通しています。不動産もこの1年間で完成在庫面積が24%も増えています。鉄道インフラにしろ不動産にしろ何年も前からスローダウンすべき産業とされてきたのに今でも増え続けているわけです。しかし、いらない鉄道や誰も住まないマンション群を作るために雇用が創出されたとすれば自虐経済といっても過言ではないでしょう。
国家は破綻するか、と言われれば弱小国では経済的行き詰まりは起こり得ますが、中国のように巨大国である程度の自己完遂能力を持ち、自律型経済力を持つところは貧困問題は内在すれど破綻は通常しません。あるとすればソ連崩壊と同じようなシステム上の問題が明白になった時か、旧来の流れを変えるだけの国内圧力が生じた時に国家の体制が転換するのがシナリオとして起こりうるケースだと思います。
但し、私は過去10数年以上、中国は崩壊しないと申し上げてきました。現段階では崩壊するシナリオを描くほどの創造力は湧き上がらない、つまり、国民生活はじり貧ながらも真綿で首を絞められているような感じでしょうか?日本も30年前後、さまよったわけですが、その時に日本崩壊などは話題にもならなかったし、そういう気配もなかったのです。中国も同様に長くもがくのだと思います。あとどれぐらい続くかは想像できませんが、10年とか20年といったスパンになるような気がします。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年7月16日の記事より転載させていただきました。