昨今のニュースを見ていると、恐ろしい自然災害と言えば「地震」や「津波」が思い浮かびますが、「火山の噴火」も侮ることはできません。
特に大規模な火山噴火は地震などと異なり、長期間放出される火山灰やガスによって広範囲の地域に深刻な影響を与える可能性があります。
日本でも、7300年前に生じた「鬼界カルデラ」の巨大噴火(アカホヤ噴火)は、南九州の縄文文明に壊滅的な影響を与えており、その火山灰は東北地方まで至っていたことが示されています。
日本は国内にそんな危険な鬼界カルデラを含めた110以上の活火山を有しているため、過去の火山噴火の影響を正確に知っておくことは、私たちが将来に備えるために重要です。
そして最近、神戸大学海洋底探査センターに所属する清水 賢氏ら研究チームは、鬼界カルデラ周辺の海底探査と海底堆積物の分析から、アカホヤ噴火で発生した火砕流が海中に突入し、4500km2以上の海底に広がっていたことを発見しました。
この結果は、完新世(11700年前~現代)において、アカホヤ噴火が地球上で最大の火山噴火であったことを示しています。
研究の詳細は、2024年2月1日付の学術誌『Journal of Volcanology and Geothermal Research』に掲載されました。
7300年前の鬼界カルデラの巨大噴火は、縄文人を壊滅させる
鬼界カルデラとは、鹿児島の約100km南にある海底火山です。
「カルデラ」とは、大量のマグマが短時間で噴出することで岩盤が落ち込んでできる凹地のことであり、直径約20kmの鬼界カルデラもこれに該当します。
画像の点線が示すように、薩摩硫黄島と竹島が鬼界カルデラの北縁に相当し、カルデラ中央は海底にあります。
そしてこの鬼界カルデラを作るような火山噴火は、過去十数万年で複数回発生したと考えられています。
特に7300年前に発生した鬼界カルデラの巨大噴火は、「アカホヤ噴火」と呼ばれており、これが引き起こした火砕流は、海を渡って南九州の縄文文明に壊滅的な被害を与えました。
当時そこに住んでいた縄文人は、他の地域に逃げた一部の人々を除き、壊滅したと考えられています。
その後、この地域は1000年近く無人の地となったようで、新しく住み着いた縄文人は、以前の縄文人とはルーツが異なっています。
また、このアカホヤ噴火に伴って、大量の火山灰も噴出しました。
火山灰に覆われた面積は約200万km2、体積は約100km3にもなり、その証拠は火山灰でできた「アカホヤ」と呼ばれる地層から明らかになっています。
実際、九州南部の地下では、その地層の厚さが約1mにもなり、四国・中国地方で20cm以上、広くは東北地方や朝鮮半島南部にも分布しています。
このように、7300年前の鬼界カルデラの巨大噴火による影響は、陸地に溜まった「噴出物」を調査することで、推計されてきました。
しかしこれら噴出物は、陸地だけでなく、海中にも流入したはずです。
それでも、海中に流入したはずの噴出物がどの程度存在しているかはこれまで確かめられておらず、その規模や噴出物の運搬過程は分かっていませんでした。
そこで今回清水 賢氏ら研究チームは、海底に溜まった「噴火の証拠」を分析することにしました。