太陽はロウソクと違い核融合で燃えている
なぜ太陽を冷やすための巨大水風船が、酷い結果をもたらすのか?
その第1の理由が、そもそも太陽はロウソクとは違って、酸素を使って燃えているわけではないからです。
太陽は巨大な重力によって中心部で圧縮された水素原子が融合してヘリウムになったときに発生する「核融合」のエネルギーで燃えています。
つまり太陽を燃やしている原動力が何かというと、それは太陽自身の重さなのです。
太陽と同じサイズの巨大水風船が命中すれば、瞬間的な冷却が起こるのは確かです。
しかし太陽に降り注いだ水は太陽の質量を増す結果になり、中心部分の圧力はより増強されます。
さらに水の組成には核融合の元となる水素原子が含まれているため、実質的に燃料が追加されたことになります。
そのため一時的に太陽の熱を下げることができても中心部の圧力が増強されるため、やがて核融合が勢いを取り戻し、より激しく燃え盛ります。
ただコレでもまだ穏やかなほうです。
![大質量で進化の終わった恒星では、(a)タマネギのような層状の原子の殻が融合を起こし、ニッケル-鉄の核を形成する。(b)チャンドラセカール質量に達し、崩壊を始める。核の内部は圧縮され、中性子になる。(c)落ち込んだ物質がバウンドする。(d)外側に向かう衝撃波面(赤色)となる。(e)衝撃波は収まり始めるが、ニュートリノ相互作用により、再び開始する。(f)周りの物質は吹き飛ばされ、縮退残骸が残る。](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/07/13f80e56266c64ba667e7bf0e2ab63de-900x506.jpg)
太陽は常に自分の重さで潰れそうな状態を、核融合のエネルギーによって支えています。
質量増加が急すぎる場合、太陽は自らの体重を支えることができなくなり、爆縮と呼ばれる現象を起こしてしまいます。
これにより太陽の外核では光速の23%で内核に落下し、内核は瞬間的に1000億℃に達します。
そして落ち込んだ物質は太陽の核でバウンドし、今度は外向きの強力な衝撃波を発生させます。
これにより超新星爆発が起こります。
(※超新星爆発のタイプはⅡ型に近いものになると考えられます)
ですが1億倍サイズの水風船をぶつけた時に比べれば可愛いものです。
![あまりに重たいものが狭い範囲に集中するとブラックホールになります](https://nazology.net/wp-content/uploads/2023/07/dd087b429a21b00aee1538c113c89c0b-900x506.jpg)
太陽の1億倍サイズの水風船をなんとか用意して太陽にぶつけた場合、風船から飛び出した水が太陽に降り注ぎ、太陽の質量は数千万倍にも膨れ上がります。
すると太陽の核にかかる圧力は莫大なものになり、超新星爆発前のように核がどんどん押し潰されていきます。
ただ質量と圧力があまりにも巨大かつ急激に上昇するため、今度は落ち込んでいく物質はバウンドせず、1点に向けて無限に圧縮されていきます。
無限に圧縮された1点が空間に現れるとどうなるか?
答えは「ブラックホールができる」となります。
太陽の1億倍サイズという超大質量は物質が支えられる限界を遥かに超越しており、文字通り空間に穴が開いてブラックホールになってしまうのです。
以上から、太陽に同サイズの巨大水風船をぶつけても「火は消えない」という結論に至ります。
また1億倍サイズの極超巨大水風船をぶつけたら「ブラックホール」になります。
核融合が起こっていないという点においては、火は消えたと言えるでしょう。
しかしコレジャナイ感はぬぐえません。
もし魔法の力があったとしても、太陽に水風船をぶつけるのはやめたほうがいいでしょう。
参考文献
Lonely Hearts of the Cosmos: The Story of the Scientific Quest for the Secret of the Universe
元論文
Gravitational Waves from Gravitational Collapse