想像してみましょう。

太陽をまわる地球と同じ軌道上に、もう一つの地球があることを。

私たちが真夏に突入しようとしているときに、まだ冬を満喫している双子の片割れを。

こうした同じ軌道上を公転する2つの惑星を「トロヤ惑星(trojan planet)」と呼びます。

この惑星は理論上の存在として20年前から仮説が立てられていましたが、いまだ発見には至っていませんでした。

しかし今回、スペイン宇宙生物学センター(CAB)、ヨーロッパ南天天文台(ESO)らの国際研究チームにより、初めての「トロヤ惑星」の証拠が太陽系外に発見されました

研究の詳細は、2023年7月19日付で天文学雑誌『Astronomy & Astrophysics』に掲載されています。

トロヤ惑星は「ラグランジュ点」に位置する

トロヤ惑星とは、具体的にいうと、中心星のまわりを公転する天体の「ラグランジュ点」に位置する仮説上の惑星です。

ラグランジュ点は、ガンダムやSF小説に詳しい方なら聞き馴染みのあるワードでしょう。

太陽と地球を例に説明しますと、地球の軌道上には、太陽と地球の重力バランスがつり合う特殊なポイントが5つあるとされます。

これがラグランジュ点(Lagrangian point)です。

2つの天体の重力バランスがつり合う5つのポイント(L1〜L5)
Credit: ESA – The five Lagrange points(2021)

このポイントに天体があると、太陽と地球との相対的な位置関係が変わることなく、安定して留まることができるのです。

中でも特に、太陽と地球を結ぶ線から左右に60度傾いたL4とL5が最も安定していると言われます。

ここに人工衛星を置けば、太陽と地球との位置関係が変わらないため、天体の観測がしやすくなりますし、軌道上の位置を維持するためのエネルギーが最小化されるので効率的な運用も可能です。

ガンダムでラグランジュ点にスペースコロニーを建設したのも、そうした理由からだったでしょう。

いまだ見つかっていないトロヤ惑星

太陽系内では、太陽と木星のラグランジュ点(L4とL5)に何千もの小さな岩石が集まる「木星のトロヤ群」が発見されています。

こうしたラグランジュ点の存在は、理論上1つの軌道上に複数の惑星が安定して存在できる可能性を示唆しています。

しかし、中心星(太陽)の公転軌道を複数の惑星で共有する「トロヤ惑星」はいまだ見つかっていません。

木星のトロヤ群(緑)
Credit: ja.wikipedia

ところが今回、研究チームはついにトロヤ惑星の存在を証明するかもしれない強力な証拠を発見したのです。

一体どこにどんな形で見つかったのでしょうか?