4月19日、地球から5700万キロメートル離れた位置に地球衝突コースに乗った小惑星が発見しました。
「2021PDC」と名付けられたこの小惑星は、半年後の2021年10月20日に、地球へ落下すると予想されます。
と、これはーストリアのウィーンで開催された国際天文学アカデミー(IAA)2021惑星防衛会議においてNASA主導で行われた、小惑星の地球衝突シミュレーションのシナリオです。
本当にそんな小惑星が存在するわけではないので、なにも心配する必要はありません。
しかし、もし半年後に地球へ衝突するという小惑星が発見されたとき、人類には何ができるのでしょうか?
目次
地球衝突の危険性がある小惑星を発見!
核兵器を使っても衝突阻止は困難
地球衝突の危険性がある小惑星を発見!
注)これはシミュレーションです。
4月19日、地球から5700万キロメートル離れた位置に地球衝突の危険性がある小惑星が発見されました。
小惑星の呼称は「2021PDC」と決定。
この小惑星の見かけの等級は21.5(約120メートル)です。
しかし、サイズを推定するための反射率(アルベド)が不明のため、実際のサイズは35~700メートルの範囲である可能性があります。
小惑星発見の翌日、4月20日に小惑星の軌道が算出され、半年後の10月20日に地球軌道と交差することが判明しました。
現時点での地球との衝突確率は5%です。
しかし、観測データは日を追うごとに集まっていき、地球への衝突確率は着実に増加していくことになります。
小惑星は秒速5キロメートルで、地球へ接近していてゆっくりと明るくなっており、発見後1週間で広く観測されるようになるでしょう。
小惑星は現在遠すぎるためレーダー検出ができません。レーダーの範囲内に入るのは落下予想から1カ月を切った10月以降です。
上の画像は4月20日時点での小惑星と地球の位置および軌道を表したものです。2つの軌道が交差する赤枠が衝突予想ポイントとなります。
現時点で得られた情報から、科学者たちは小惑星の地球衝突予想を組み立てます。
次の画像は、赤枠の軌道交差点を拡大したものです。
赤い点で示されているのが、2021年10月20日に、地球と軌道を交差させて通過するときの小惑星の予測位置です。
たくさん点があるのは、現時点での予想不確実性のためです。
月軌道直径の4分の3に及ぶ縦長の範囲で、小惑星は地球と交差する可能性があります。
この不確実性領域は今後数カ月にわたる観測によって、適切に修正されていくことになります。
衝突時の小惑星の位置に関する不確実性領域は、地球のサイズよりはるかに大きいため、地球のどこにでも落下する可能性があります。
次の画像では、現在の不確実性を考慮した上で、GoogleEarth上に予想される地上の衝突地点をプロットしています。
こんなに落下予想が広いのでは、エヴァで受け止めるのも難しそうです。
衝突予想時、地球は小惑星に対してこの面を向けているため、インドネシアやオーストラリアなどの危険度は低いようです。
しかし、小惑星は地球重力の影響で曲がるため、この面以外の地球のエリアも落下の影響を受ける危険性があります。
現在、地球への落下場所などは不確実なままです。
しかし、小惑星が地球へ到達するまで、まだ半年の時間があります。
人類にこの厄災を回避することは可能なのでしょうか?
核兵器を使っても衝突阻止は困難
惑星防衛会議で行われた演習の2日目、シミュレーションの時間は5月2日時点まで進められました。
この時点で、新しい衝突軌道計算が行われ、2021PDCはほぼ確実にヨーロッパ、または北アフリカに打撃を与えることが判明しました。
ここで演習に参加した科学者たちは、探査機を使った攻撃によって小惑星を破壊したり、小惑星の軌道をそらせる可能性があるかを検討しました。
結果、科学者たちは、現実に今回の2021PDC仮想シナリオが発生した場合、半年未満の期間でこの小惑星に対応する探査機(宇宙船)を打ち上げることは、現在の技術では不可能だと結論づけました。
そこで、参加者たちは次に核兵器を用いて小惑星の爆破・破壊ができないかを検討しました。
核兵器破壊ミッションを展開すれば、小惑星衝突による被害を大幅に減らすことが可能です。
しかし、今回想定されている35~700メートルのサイズ範囲を持つ小惑星を、核兵器で破壊できるかどうか不確かでした。
この時点で、人類が小惑星に対して打てる手立てはほぼ失われてしまいました。
演習の3日目は、6月30日まで時間が進められます。
この時点で、2021PDCは東ヨーロッパに向かっていることが明確になりました。
そして演習4日目、ついに小惑星衝突の1週間前まで時間が進められます。