恐竜と哺乳類はともに約2億3000万年前の三畳紀に出現しています。

しかしその後、長期にわたり覇権を握ったのは体格や攻撃力に優る恐竜たちでした。

哺乳類はどう猛な恐竜の陰で肩身の狭い思いをしていたでしょう。

ところが哺乳類たちも常にやられっぱなしではなかったようです。

カナダ自然博物館(CMN)、中国・海南科技職業大学(HVUST)はこのほど、オポッサムのような哺乳類が自分の倍もある恐竜を捕食していた化石証拠を発見したと報告しました。

完璧に保存されたバトル真っ最中の化石を見ると、きっと驚きますよ。

研究の詳細は、2023年7月18日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

保存状態が完璧すぎる白亜紀の化石

調査された化石は2012年に、中国東北部・遼寧(りょうねい)省にある約1億2500万年前の白亜紀地層で発見されたものです。

この地域は白秋に噴火した火砕流によって急速に埋没し、恐竜の多くが完璧な状態で保存されていることから「中国の恐竜ポンペイ(China’s dinosaur Pompeii)」と呼ばれています。

(ポンペイとは西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火で埋没した古代ローマ時代の都市のこと)

しかし今回の化石は発見以来ずっと保管されたままであり、今日まで詳しく研究されていませんでした。

それがこちらです。

白亜紀の哺乳類と恐竜の化石
Credit: CMN – Fossil: Mammal attacks dinosaur(2023)

骨格の全体が見事なまでに保存されているのが分かるでしょう。

ここには白亜紀に存在した2種の古生物が絡み合う状態で写されています。

1つは「プシッタコサウルス・ルジアトゥネンシス(Psittacosaurus lujiatunensis)」という草食恐竜です。

プシッタコサウルス属は約1億2500万〜1億100万年前に、現在のモンゴル、中国、タイに広く分布していました。

体長は1〜2メートルほどで、オウムのような硬いクチバシを持ち、後脚の二足で歩き、前手には鋭い鉤爪があります。

もう1つは「レペノマムス・ロブストゥス(Repenomamus robustus)」という現代のオポッサムに似た哺乳類です。

レペノマムスは白亜紀前期の中国に存在し、小型と大型の2種がいました。

R. ロブストゥスは小型種の方で、大人でも体長50センチほどしかなく、プシッタコサウルスの半分以下だったと見られます。

それでも当時の世界では、世界最大級の哺乳類のひとつでした。

では、この化石は具体的にどのような状態を示していたのでしょうか?