歌川国芳(うたがわくによし)は、広重(ひろしげ)、国貞( くにさだ) と並び歌川派三大巨匠に数えられる代表的な浮世絵師の一人であり、数ある浮世絵師の中でもきわめて奇抜でポップなクリエイターだ。 武者絵はもとより、美人画、だまし絵あるいは妖怪画などアイデアが豊富で幅広い題材を扱った 人物でもある。妖怪「がしゃどくろ」 のイメージのもとになったと言われる巨大な髑髏(どくろ) を描いた『相馬の古内裏(ふるだいり)』は、目にしたことのある人も多いのではないだろうか。
独特の世界を描くことに長けた国芳の浮世絵であるが、その中の一枚にある奇妙なものが描かれているということで一頃話 題となった。それは東京都墨田区押上にある「東京スカイツリー」である。東京のランドマークの一つであるスカイツリーは、2012年に完成および開業した電波塔で、高さ634メートルの世界で最も高いタワーとなっている。そんなスカイツリーのような建造物が、国芳の浮世絵に描かれているというのである。
問題の絵は、国芳が33歳であった1831年に描かれた『東都三ツ股の図』という絵である。この絵は、防腐のために船腹を約船大工や積み荷を運ぶ船などが描かれ、 背景右手に大きく永代橋、 佃島を経由して左手に小さく万年橋がある。その万年橋のそばにスカイツリーらしき高い建造物が存在しているのだ。
話題の発端は、2011年2月22日の東京新聞朝刊であると言われている。『歌川国芳作 浮世絵に謎の塔』と題され、「空想の産物ではなくホントに見えたものを書いているはず」という洋画家のコメントも添えられていた。
この建造物のすぐ左隣には、それよりも半分ほど背の低い「火の見櫓(やぐら)」と思しきものも見受けられる。当時、火の見櫓は10メートル程度がオーソドックスな高さであったが、ここから割り出すとそのスカイツリーらしき建造物はおよそ25~ 35メートルほどと考えられ、当時でもかなり高い建造物と言える。厳密に言えば、位置的には実際のスカイツリーの場所とはずれている。
現在、このスカイツリーらしきものについては「井戸掘り櫓」 ではないかという説が有力となっている。この絵で描かれている深川は埋め立て地であり、浅井戸では海水が混じり飲用として適さない。そのため、通常よりも深く掘らなければならないため、ここまで高い櫓が作られたのではないかと考えられている。また、この井戸掘り櫓は役目を果たしたのちはすぐに解体されるため、 のちの絵には見られないという。
だが、すべてが明らかになったわけではない。地質の関係があったとしても果たしてそれだけの高い櫓が必要だったのかという疑問はある。一説には、水をくみ取るということではなく、硬い層にぶつかってしまったために力ずくで掘り抜くために高く設 置したのではないかとも考えられている。とはいえ、それでも当時としては異様な高さを誇るため、 何らかの記録が残っていてもおかしくはないがそのようなものは見 つかっていない、という意見もある( 絵画なりの誇張と言われればそれまでであるが)。
このスカイツリーらしきものが描かれているという点で、歌川国芳は「スカイツリーが建つことを予言していた」あるいは「未来の江戸(東京)にタイムトラベルした」といったような都市伝説も生まれることにもなった。この他にも、彼の『江戸じまん名物くらべ』という作品では、女性が手に黒くやや四角い物体を持っており、これはiPhoneなのではないかとも一部で吹聴(ふいちょう) された。しかし、この絵は「こま込のなす」 との副題も付いており、 なすを剥いている女性を描いたものであることがハッキリしている 。彼のアイデアの奇想天外ぶりなどが相まって、これらのような不思議な都市伝説が生み出されたことは間違いない 。
【参考記事・文献】
東京スカイツリーが描かれていると話題になった歌川国芳の浮世絵 のナゾに迫る
「東都三ッ股之図」
歌川国芳が約200年前に描いたスカイツリーに似た物の正体は! ?
江戸時代にiPhoneが描かれていた!! 歌川国芳がマジでタイムスリッパーな件
【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】
文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
提供元・TOCANA
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