ダイオウホウズキイカの赤ちゃんを生きた姿で発見?

海洋探査チームは2025年までにダイオウホウズキイカを自然の生息地で発見し、その生態を解明するという野心的な計画を打ち出していました。

なぜ2025年かというと、ダイオウホウズキイカが学術的に初めて記載されたのが1925年であり、2025年はちょうど100周年にあたるからです。

そこでチームは2022年12月〜2023年3月の間に、生きたダイオウホウズキイカを見つけようと4度にわたる南極沖調査に出かけました。

調査に使用したのは極地観光船「オーシャン・エンデバー(Ocean Endeavor)」で、これには最大水深400メートルまで潜水できるカメラシステムが搭載されています。

極地観光船「オーシャン・エンデバー」
極地観光船「オーシャン・エンデバー」 / Credit: The Polar Travel Company

4度の深海探査の結果、サンゴやウミユリ、クダクラゲといった生物を多数発見したものの、お目当てのダイオウホウズキイカの成体は見つかりませんでした。

ところが映像を分析している中で、全長10〜12センチの小さな透明のイカが映り込んでいるのに気づいたのです。

このイカは海中を漂う無数のマリンスノー(表層から深層に降り注ぐ有機物の残骸)に紛れていたため、鮮明には見えませんでした。

しかし研究者らは映像をできるかぎり分析した結果、このイカは同じサメハダホウズキイカ科に属するナンキョクスカシイカ(学名:Galiteuthis glacialis)の成体か、ダイオウホウズキイカの幼体のどちらかである可能性が高いと結論しています。

実際の映像がこちらです。(全編は記事の最後に添付してあります)

画面右上から1匹のイカが横切っているのがわかる
画面右上から1匹のイカが横切っているのがわかる / Credit: IFLScience / Deep Sea Antarctica – Possible Juvenile Colossal Squid Sighting(youtube, 2024)

もしこれがダイオウホウズキイカの幼体であるなら、自然の生息地で生きた姿を捉えた世界初の映像となります。

一方で研究者らによると、ナンキョクスカシイカの標本も過去に数例しか見つかっていないため、いずれにしても貴重な映像になるという。

しかし今回の短い映像だけでは、このイカの正体を断定することができなかったので、ダイオウホウズキイカを求める調査はさらに続行されます。

Kolossalの創設者で今回の海洋探査を率いたマット・マルレナン(Matt Mulrennan)氏は「ダイオウホウズキイカは私たちがいかに海について知らないかを改めて教えてくれる存在です」と話しました。

果たして、100周年のアニバーサリーを迎える2025年までに生きたダイオウホウズキイカを見つけることはできるのでしょうか。

今後も注目が集まります。

参考文献

“Mystery” Glass Squid In Antarctica Could Be First-Ever Colossal Squid Baby Filmed

Scientists Think They’ve Captured First-Ever Footage of a Colossal Squid Baby

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。