故障した宇宙船「スターライナー」の今後の身の振りについての議論が今も続いている。仮に故障したスターライナーを使い続ける判断を下した場合には、3つの恐ろしいシナリオが起こり得るという。最悪の場合、宇宙飛行士が大気圏で燃え尽きるというのだ。

■スターライナーの去就、3つのシナリオ

 今年6月5日に打ち上げられたボーイング社製のカプセル型有人宇宙船「スターライナー」はISS(国際宇宙ステーション)に到着後、2人の乗組員は8日間の滞在後に地球に帰還する予定であったが、不運にもいくつかの故障が確認され、今もISS内での滞在を余儀なくされている。

 ボーイングが社の威信を賭けて開発し、運用に漕ぎつけたスターライナーを今後どうすればよいのか。いずれにしても早急に決断が下されねばならない状況にある。

 NASAは現在、故障したスターライナーを使い続けるか、スペースXの宇宙船「クルードラゴン」を派遣して乗組員を帰還させるかを決めかねている。ライバルであるスペースXの宇宙船に救助されることは、ボーイングにとってひどく威信を傷つけられる屈辱にもなる。

 かつて米軍の宇宙システム司令官であったルディ・リドルフィ氏は、スターライナーを放棄しない選択した場合に起こり得る3つの恐ろしいシナリオを説明した。最悪のシナリオには、再突入時に乗組員がカプセル内で燃え尽きるシナリオも含まれる。その3つのシナリオとは以下の通りだ。

今、宇宙に取り残されているNASAの宇宙飛行士を待ち受ける恐ろしいシナリオとは
(画像=スターライナー(CST-100 Starliner) 画像は「Wikipedia」より,『TOCANA』より 引用)

シナリオ1:宇宙空間で浮いたままになる
 往路のスターライナーはISSに到着するまでに5つのスラスター(制御推進装置)が故障したのだが、このまま帰路に就いた場合、さらに多くのスラスターが故障し、ISSと地球の間のどこかで浮いたままになる可能性がある。船内の酸素は出航してから96時間までしか持たず、この時間内に何らかの対策が講じられなければならない。
シナリオ2:大気圏に跳ね返される
 スターライナーのサービスモジュールは船全体のコントロールセンターのようなもので、スラスター、電力、乗員用の水と酸素を制御するシステムが含まれている。
 カプセルの底部にあるこのモジュールは、大気圏再突入に向けて正確な調整が必要とされている。もしもこの調整にわずかでも不備があると、大気圏再突入の角度が浅くなって宇宙船は大気圏に跳ね返されてしまう。この場合も救助に費やせる時間は限られている。
シナリオ3:大気圏で燃え尽きる
 同じくサービスモジュールの調整が不適切で、大気圏突入が垂直に近くなってしまうと、今度は摩擦が大きくなり、大気圏で乗組員もろとも燃え尽きてしまう可能性が高くなる。これが最悪のシナリオだ。
 シナリオ1、シナリオ2の場合、NASAは宇宙飛行士を救出するために救出船を送らざるを得なくなるのだが、その場合は宇宙船同士のドッキングミッションが必要とされる。
 もちろんNASAはこのドッキングミッションについてのノウハウは持っているが、これまでにこのミッションは1966年に無人宇宙船の救出のために1度行われただけである。したがって作業にはそれなりの時間がかかることが予想される。
 どうであれ人命を第一に考えれば、たとえボーイング社のプライドが傷ついたとしても最も安全な対策が講じられなくてはならないだろう。近くにもNASAはスターライナーの去就についての判断を下すということで気に留めておきたい。
参考:「Daily Mail」ほか

文=仲田しんじ

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提供元・TOCANA

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